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BMD-1空挺戦闘車





ヴォルゴグラード・トラクター工場は、1960年代前半に歩兵戦闘車(BMP)の開発を巡りチェリャビンスク・トラクター工場と競争していたが、後者が開発したオブイェークト765が「BMP-1」として制式採用されることがほぼ決定した1965年頃、空挺部隊用の歩兵戦闘車の開発に転じた。
その結果生み出されたのが、BMD-1(オブイェークト915)空挺戦闘車である。
ちなみに「BMD」とは、「Boevaya Mashina Desanta:空挺戦闘車両」の略である。

BMD-1空挺戦闘車は、戦闘重量わずか7.6tの小振りな車体にBMP-1歩兵戦闘車と同一の砲塔と武装を搭載した、ソ連・ロシア軍以外に例を見ないパラシュート投下可能な空挺部隊用の歩兵戦闘車である。
制式採用は1969年だが生産自体は先行して1968年から始まっており、まとまった数の揃った1970年代以降、順次ASU-57空挺自走砲と交代して配備されていった。
西側が本車の存在を確認したのは、1970年のことである。

BMD-1空挺戦闘車の装備化で、ソ連軍空挺部隊(VDV)は降下後の戦闘力・機動力の画期的向上を実現することができた。
そして1980年頃には本車をベースにした空挺兵員輸送車BTR-Dと共に、空挺部隊で完全定数を装備するようになっていた。

BMD-1空挺戦闘車の車体は、本車のために全く新規に製作されたものである。
構造は防弾アルミ板の溶接で、基本形状はBMP-1歩兵戦闘車に似た低平なものとなっている。
車内配置は前から操縦室、砲塔を搭載した戦闘室、兵員室、機関室となっている。
武装は、車体中央部前寄りに搭載された1名用砲塔に30口径73mm低圧滑腔砲2A28「グロム」(Grom:雷鳴)が装備されており、支援火力を提供する。

この砲は非装甲目標用のHE-FRAG(破片効果榴弾)の他、装甲目標用のHEAT(対戦車榴弾)も発射可能である。
主砲防盾の上部には有線誘導式対戦車ミサイル9M14「マリュートカ」(Malyutka:赤ん坊)の発射レールが装着できるようになっており、3発のミサイルを車内に搭載する。

さらに対人用には主砲と同軸に7.62mm機関銃PKTを1挺装備しており、これとは別に車体前端両側にも7.62mm機関銃PKTを1挺ずつ固定装備しており、操縦手によるリモコン操作で前方を掃射することが可能である。
エンジンは5D20 V型6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力240hp)を搭載しており、戦闘重量が7.5tしかないことから出力/重量比は31.6hp/tにも達し、かなり良好な機動力を発揮できる。
路上最大速度は70km/hとなっているが、これは装軌式車両としては非常に高速である。

また本車は、車体後部に装備されたウォーター・ジェットにより水上を10km/hで航行することも可能である。
固有の乗員は操縦手、車長兼砲手の2名で、その他に5名の空挺隊員を搭乗させることができる。
乗員の配置は操縦室に3名、砲塔内に1名、兵員室に3名が搭乗する。
空挺隊員は車体の左右側面に設けられたガンポートを用いて、車内から携行火器を発射することが可能である。

BMD-1空挺戦闘車はAn-22やIl-76大型輸送機を使用して、空輸もパラシュート投下も可能である。
空輸の場合、Il-76輸送機なら本車を同時に3両輸送することができる。
パラシュート降下の場合は、着地時の衝撃によるサスペンションの破損を防ぐために油気圧式サスペンションのアームを畳むことによって車底と転輪接地部を水平にし、専用パレットに載せて投下される。
油気圧式サスペンションによる車高の調整は、約35cmの範囲で可能となっている。

専用パレットにはパラシュートの他、地上直前で減速のため点火されるロケット・ブースターが取り付けられていて、着地時の衝撃を減少するようになっている。
BMD-1空挺戦闘車は1979年12月のアフガニスタン侵攻作戦に投入され、アフガニスタン大統領府ダルラマン宮殿の襲撃に参加した。

1977年からは対戦車ミサイルを半自動誘導式の9M111「ファゴット」(Fagot)、または9M113「コンクールス」(Konkurs:競技)に換装したBMD-1P空挺戦闘車の生産に移行し、既存の車両も順次載せ替えられていった。
BMD-1空挺戦闘車は現在もロシア軍に多数が就役し、最近は治安任務などに手軽に使用できる小型装甲車両としても珍重されているようである。


<BMD-1空挺戦闘車>

全長:    5.40m
全幅:    2.63m
全高:    1.97m
全備重量: 7.5t
乗員:    2名
兵員:    5名
エンジン:  5D20 4ストロークV型6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 240hp/2,600rpm
最大速度: 70km/h(浮航 10km/h)
航続距離: 320km
武装:    30口径73mm低圧滑腔砲2A28×1 (40発)
        7.62mm機関銃PKT×3 (2,000発)
        9M14マリュートカ対戦車ミサイル発射機×1 (3発)
装甲厚:   6〜23mm


<参考文献>

・「パンツァー2000年8月号 ソ連・ロシア装甲車史(最終回) BMD・BTR-70/80/90シリーズ」 古是三春 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2000年4月号 続 垣間見えてきた旧ソ連の戦車技術」 二木巌 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年10月号 ソ連空挺戦闘車輌の系譜」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー1999年6月号 最近のロシア軍AFV」 古是三春 著  アルゴノート社
・「ロシア軍車輌写真集」 古是三春/真出好一 共著  アルゴノート社
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」  デルタ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー


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