モスクワのスターリン記念自動車工場(ZIS)では1934年以来、同工場生産のZIS-6 6輪トラックをベースにした装輪式装甲車の製作を企図していたが、BA-11はBA-5に次いで同工場が開発した重装甲車で1939年にソ連軍に制式採用され、1940年にレニングラード(現サンクトペテルブルク)のイジョーラ製鋼所で16両だけ生産された。 BA-11重装甲車は、基本的仕様においてBA-10中装甲車を踏襲するもので本質的な変更は無かったが、車体や砲塔のデザインにより流線型を採り入れて避弾経始を向上させ、全体的にコンパクト化を図って被弾確率を低減させると共に、最大装甲厚を13mmと初期のBT快速戦車やT-26軽戦車並みにして防御力が強化されていた。 そのためBA-11重装甲車の戦闘重量は8.13tに達したが、本車に搭載されたZIS-16液冷ガソリン・エンジンは、BA-10中装甲車に搭載されたGAZ-M1液冷ガソリン・エンジン(出力50hp)の約2倍の99hpの出力を発揮でき、おかげで路上最大速度は64km/hとBA-10中装甲車よりも約10km/h向上していた。 また、1940年秋にはZIS-34D液冷ディーゼル・エンジン(出力98hp)を搭載したBA-11D重装甲車が登場したが、こちらは新規開発のエンジンの調達が思うに任せない上、若干信頼性に問題があったと見られわずか6両の少数生産に留まっている。 BA-11重装甲車シリーズは、この全く少ない生産量ながらも1941年6月に開始された独ソ戦で実戦投入されたが、初期の段階でその全てが失われたようである。 |
<BA-11重装甲車> 全長: 5.295m 全幅: 2.39m 全高: 2.49m 全備重量: 8.13t 乗員: 4名 エンジン: ZIS-16 液冷ガソリン 最大出力: 99hp 最大速度: 64km/h 航続距離: 316km 武装: 46口径45mm戦車砲20K×1 (114発) 7.62mm機関銃DT×2 (3,087発) 装甲厚: 4〜13mm |
<BA-11D重装甲車> 全長: 5.295m 全幅: 2.39m 全高: 2.49m 全備重量: 8.13t 乗員: 4名 エンジン: ZIS-34D 液冷ディーゼル 最大出力: 98hp 最大速度: 64km/h 航続距離: 武装: 46口径45mm戦車砲20K×1 (114発) 7.62mm機関銃DT×2 (3,087発) 装甲厚: 4〜13mm |
<参考文献> ・「パンツァー1999年12月号 ソ連・ロシア装甲車史(5) 装甲車の黄金時代(3)」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「グランドパワー2005年1月号 第2次大戦のソ連軍装甲自動車(1)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2021年6月号 ソ連軍装甲自動車 1905〜1938」 大村晴 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 |