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BA-10中装甲車





BA-10中装甲車は、1938年にイジョーラ製鋼所においてBA-6M中装甲車をベースに車体をリファインさせて開発された、ソ連軍の一連の6輪装甲車シリーズの決定版ともいうべきものである。
本車もBA-6M中装甲車と同じくベースとなったのはGAZ-AAA 6輪トラックであるが、装甲ボディの各所に流線型を採り入れ軽量化が図られていた。
また新たに、砲塔上面にペリスコープ型視察・照準装置が搭載されている。

この視察・照準装置は、ソ連がスウェーデンのランツヴェルク社から研究用に購入したL-60軽戦車に搭載されていたドイツのツァイス社製のものをコピーしたもので、同時期に開発されたソ連軍戦車に広く普及していったものである。
武装は砲塔防盾に46口径45mm戦車砲20Kと7.62mm機関銃DTを同軸に装備していた他、戦闘室前面のボールマウント式銃架にも7.62mm機関銃DTを装備していた。

BA-10中装甲車の生産はBA-6M中装甲車に代わって1938年から開始されており、1939年からは改良型のBA-10M中装甲車に生産が切り替えられた。
BA-10M中装甲車の生産は、1941年の独ソ戦開始頃まで続けられた。
スマートなデザインと戦車並みの強武装を誇ったBA-10中装甲車シリーズは、1939年のハルハ川戦役(ノモンハン事件)での活躍を皮切りに独ソ戦の全期間を通じて戦い抜いた。

しかしかえってこの戦車並みの武装が災いしてか、いずれの戦闘でも戦車代わりに投入されてあまり良好でない不整地踏破力や貧弱な装甲防御力に起因して大きな損失を出している。
しかしながら、BA-10中装甲車シリーズは第2次世界大戦におけるソ連軍の最も代表的な装甲車といえるもので、大戦後期においても偵察部隊や若干の戦車軍団における司令部車両の中に姿が見られた。
またフィンランド軍も捕獲した本車を使用し、これらは戦後の1950年代末まで同軍で現役に就いていた。


<BA-10中装甲車>

全長:    4.655m
全幅:    2.07m
全高:    2.19m
全備重量: 5.12t
乗員:    4名
エンジン:  GAZ-M1 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 50hp/2,800rpm
最大速度: 53km/h
航続距離: 300km
武装:    46口径45mm戦車砲20K×1 (49発)
        7.62mm機関銃DT×2 (2,079発)
装甲厚:   3〜13mm


<BA-10M中装甲車>

全長:    4.655m
全幅:    2.07m
全高:    2.19m
全備重量: 5.36t
乗員:    4名
エンジン:  GAZ-M1 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 50hp/2,800rpm
最大速度: 53km/h
航続距離: 300km
武装:    46口径45mm戦車砲20K×1 (49発)
        7.62mm機関銃DT×2 (2,079発)
装甲厚:   3〜13mm


<参考文献>

・「パンツァー1999年12月号 ソ連・ロシア装甲車史(5) 装甲車の黄金時代(3)」 古是三春 著  アルゴノート社
・「パンツァー2007年7/8月号 1920〜30年代におけるソ連の6輪装甲車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年10月号 ソ連が開発したBAシリーズの装輪装甲車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2001年10月号 ソ連の6輪装甲自動車」 真出好一 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2020年2月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(2)」 山本敬一 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年1月号 第2次大戦のソ連軍装甲自動車(1)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2021年6月号 ソ連軍装甲自動車 1905〜1938」 大村晴 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2019年10月号 フィンランド戦車発達史」 齋木伸生 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2000年2月号 フィンランド陸軍のAFV 1941〜1944」 後藤仁 著  デルタ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
・「写真集 フィンランド軍戦車発達史 前編」 齋木伸生 著  芬蘭堂
・「図解・ソ連戦車軍団」 齋木伸生 著  並木書房


兵器諸元

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