HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)対空ミサイル・システム対空ミサイル・システム(アメリカ)>AN/TWQ-1アヴェンジャー対空ミサイル・システム

AN/TWQ-1アヴェンジャー対空ミサイル・システム





AN/TWQ-1アヴェンジャーはアメリカ軍の使用する汎用高機動車両HMMWVに、FIM-92スティンガー対空ミサイルの4連装発射機を2基装備する全周旋回式ターレットを搭載した簡易型対空ミサイル・システムで、前線後方における野戦防空や、重装備を持てない空挺部隊などの防空兵器としてアメリカ陸軍が採用したものである。

本システムは1980年代初めにボーイング・エアロスペース社が自社資金で開発に着手したもので、1984年にアメリカ陸軍の防空システムとして評価試験を受け、1987年にAN/TWQ-1「アヴェンジャー」(Avenger:復讐者)として制式採用された。
アヴェンジャー対空ミサイル・システムは台湾やエストニアにも採用され、日本も同様のコンセプトで高機動車の車台を用いた国産対空ミサイル・システム「93式近距離地対空誘導弾」(通称:近SAM)を開発している。

アヴェンジャー対空ミサイル・システムはHMMWVの車体後部にプラットフォームを設け、その上に全周旋回式のミサイル・ターレットを搭載している。
ターレットは60度/秒の速度で旋回可能で、ミサイル発射機の俯仰角は−10〜+70度となっている。
また副武装として、右側ミサイル発射機の下に12.7mm重機関銃M3Pを1挺装備している。
車両は攻撃ヘリコプターなどの攻撃に耐えられるような装甲は施されていないが、機動力は高い。

FIM-92「スティンガー」(Stinger:針)対空ミサイルは、世界で最も有名なアメリカ製の歩兵携行式対空ミサイル・システムである。
アメリカ軍は1960年代に歩兵携行式対空ミサイル・システムとしてFIM-43「レッドアイ」(Redeye:赤目)を装備していたが、誘導システムの特性で目標の後方からしか攻撃できなかった。

新型赤外線シーカー(感知機)を装備し、攻撃能力を強化したスティンガーの開発はレッドアイの配備とほぼ同時期の1967年に開始された。
1974年に最初の試射が行われ、1981年からアメリカ軍への配備が開始されている。

誘導はパッシブ赤外線誘導でシーカーを冷却することで感度を高め、目標の後方からだけではなく前後左右いかなる方向からも攻撃が可能となっている。
発射機はIFF(敵味方識別装置)を備え識別後、赤外線シーカーが目標をロックすれば発射可能となる。
最大有効射程は4,000〜4,800m、最大有効射高は3,500〜3,800mである。

アヴェンジャー対空ミサイル・システムは、このスティンガー対空ミサイルを使用するため赤外線ホーミング誘導により撃ちっ放しで、操作員はターレットの中で照準装置(FLIRおよびTV)により目標を捕捉、ロックオンしてやるだけで良い。
また対空レーダーや火器管制装置などとリンクさせることで、防空ネットワークを構成することも可能である。
戦闘の基本単位となる防空小隊は、アヴェンジャー6両と指揮車1両で編制される。


<AN/TWQ-1アヴェンジャー対空ミサイル・システム>

全長:    4.953m
全幅:    2.184m
全高:    2.59m
全備重量: 3.9t
乗員:    2名
エンジン:  GM 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
最大出力: 150hp/3,600rpm
最大速度: 105km/h
航続距離: 563km
武装:    FIM-92スティンガー対空ミサイル4連装発射機×2 (8発)
        12.7mm重機関銃M3P×1 (200発)
装甲厚:


<FIM-92スティンガー対空ミサイル>

全長:       1.52m
直径:       0.07m
翼幅:       0.091m
発射重量:    10.1kg
最大飛翔速度: マッハ2.2
誘導方式:    パッシブ赤外線
最大有効射程: 4,000〜4,800m
最大有効射高: 3,500〜3,800m


<参考文献>

・「グランドパワー2003年11月号 M1037シェルター・キャリアー/アベンジャー自走対空ミサイルシステム」  ガリ
 レオ出版
・「パンツァー2005年7月号 アメリカ軍の短距離野戦対空ミサイル アベンジャー」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年3月号 93式近SAM vs アベンジャー」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年10月号 アメリカ陸軍の現用AFV」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2000年8月号 現代の軽軍用車輌(3)」 眞光寺清彦 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年3月号 アベンジャーの機銃実射訓練」  アルゴノート社
・「パンツァー2002年3月号 アメリカ陸軍の現用車輌」  アルゴノート社
・「パンツァー2022年10月号 Avenger Crew Drill」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「大図解 世界のミサイル・ロケット兵器」 坂本明 著  グリーンアロー出版社
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版
・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」  学研
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社


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