1940年5月のドイツ軍の電撃侵攻により終戦まで戦車技術の発展が途絶えてしまったフランスは、終戦直後からそのギャップを埋めるべく新型戦車の開発に着手した。 1946年にはフランス陸軍により新型13t級軽戦車の基本仕様がまとめられ、国内の兵器メーカー各社に対して開発要求が出された。 これに応じた各社の設計から3社の案が選択されて試作車が製作され、性能比較試験を行った結果1951年にAMX社(Atelier de Construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)の手になる車両が選ばれて、「AMX-13」(AMX社の13t級戦車)の名称でフランス陸軍に制式採用された。 AMX-13軽戦車は1952年からARE社(Atelier de Construction Roanne:ロアンヌ工廠)で生産が開始され、当初の生産ペースは月産45両であった。 後にARE社が1964年からAMX-30戦車の生産を開始した際、AMX-13軽戦車の生産はMCL社(Mécanique Creusot-Loire:クルーゾ・ロワール工業)に引き継がれた。 AMX-13軽戦車は戦後すぐに開発された戦車としては珍しく、輸送機による空中輸送ができるよう極力軽量化を図って設計されていたが、これはフランスが本国より遠く離れた世界各地に植民地を持っており、戦後各地の植民地で独立闘争が活発になったという事情によるもので、有事の際には緊急輸送されて本隊が到着するまでの時間稼ぎを行うことをその開発目的の1つとしていたからである。 いわば現代の緊急展開部隊の構想を先取りしたもので、その先進性は評価できよう。 AMX-13軽戦車は独創的な設計で、戦車としては珍しく車体後部を砲塔を搭載する戦闘室とした関係から車体前部左側に操縦室、前部右側に機関室が配置されていた。 さらに砲塔は、それ自体が俯仰するユニークなFL-10揺動式砲塔が採用されていた。 これは砲塔の小型化と大口径砲の装備という相反する要求を満たすために採用されたものだが問題点もあって、制式戦車として揺動式砲塔の使用を続けているのはAMX-13軽戦車シリーズ以外では、オーストリア陸軍のSK105キュラシェーア軽戦車シリーズぐらいである。 AMX-13軽戦車の砲塔内部は上下2つのブロックに分割されており、砲塔上部に主砲と砲架が搭載され砲塔下部でこれを支持し旋回を行う。 主砲には旧ドイツ陸軍のパンター戦車が装備していた70口径7.5cmライフル砲KwK42を基に開発された、国産の61.5口径75mmライフル砲CN-75-50を採用していた。 また主砲の装填手を省いて砲塔の小型化を図るために、砲塔後部には6発入りの回転弾倉式自動装填装置が2基搭載されていた。 この装置はあくまでも装填手を省くことを目的としたものであり、発射速度は12発/分とあまり高いものではなかった。 副武装は、主砲同軸と対空用にMAS社(Manufacture d'Armes de Saint-Étienne:サン・テチエンヌ造兵廠)製の7.5mm機関銃F1が1挺ずつ装備されていた。 本車は装甲を減じることで軽量化を図っていたため、装甲厚は車体前面で15mm、砲塔前面でも25mmしかない。 AMX-13軽戦車の標準型は75mmライフル砲を装備するFL-10砲塔を搭載したAMX-13モデル51で、これにSS-11またはHOT対戦車ミサイルを備えた発展型や、EBR戦闘偵察車に装備されたFL-11砲塔を搭載したAMX-13/FL-11、モデル51の75mmライフル砲の内径を広げて90mm滑腔砲としたものを装備するFL-13砲塔搭載のAMX-13/90、モデル51のFL-10砲塔を改良して44口径105mmライフル砲を装備するFL-12砲塔を搭載したAMX-13モデル58、同じく105mmライフル砲をFL-15砲塔に搭載したAMX-13/FL-15などの各型が生産された。 この内AMX-13モデル58は、フランス陸軍ではなくオランダ陸軍が採用している。 またAMX-13軽戦車はAMX-VCI歩兵戦闘車、Mle.61 105mm自走榴弾砲、Mle.F3 155mm自走榴弾砲、AMX-13DCA対空自走砲など様々な戦闘車両のベース車体として用いられ、ファミリー車両を含めた生産数は7,700両で内3,400両が海外に輸出された。 AMX-13軽戦車シリーズの小さな車体に威力充分な主砲を搭載したコンセプトは多くの国に受け入れられ、アルゼンチンやシンガポールなど実に世界25カ国で採用されており、現在でも近代化改修を行いつつ多くの国で現役使用中である。 |
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<AMX-13軽戦車 モデル51> 全長: 6.32m 車体長: 4.88m 全幅: 2.50m 全高: 2.30m 全備重量: 14.8t 乗員: 3名 エンジン: SOFAM 8Gxb 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 250hp/3,200rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 400km 武装: 61.5口径75mmライフル砲CN-75-50×1 (37発) 7.5mm機関銃F1×2 (3,600発) 装甲厚: 10~25mm |
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<AMX-13/90軽戦車> 全長: 6.32m 車体長: 4.88m 全幅: 2.50m 全高: 2.30m 全備重量: 15.0t 乗員: 3名 エンジン: SOFAM 8Gxb 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 250hp/3,200rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 350km 武装: 52口径90mm滑腔砲CN-90-F3×1 (34発) 7.62mm機関銃F1×2 (3,600発) 装甲厚: 10~25mm |
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<AMX-13軽戦車 モデル58> 全長: 6.50m 車体長: 4.88m 全幅: 2.50m 全高: 2.30m 全備重量: 15.0t 乗員: 3名 エンジン: デトロイト・ディーゼル6V-53T 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 275hp/2,800rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 550km 武装: 44口径105mmライフル砲CN-105-57×1 (32発) 7.62mm機関銃F1×2 (3,600発) 装甲厚: 10~25mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2016年6月号 フランス軍AFVシリーズとして広く使われたAMX-13軽戦車とそのファミリー」 城島健 二 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2016年1月号 戦車100年史におけるマイルストーン」 久米幸雄 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2008年1月号 大戦後の傑作軽戦車 AMX-13」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年9月号 オランダ軍AFVの半世紀」 城島健二 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年2月号 フランス戦車の辿った一世紀」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年4月号 フランスの軽戦車 AMX13」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2011~2012」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 斎木伸生 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2005年5月号 シリーズ:中東戦争(2)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後~現代編」 デルタ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社 ・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」 コーエー |
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