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98式/99式戦車


98式戦車




99G式戦車




中国軍とNORINCO(中国北方工業公司)は1980年代末に88式戦車を実用化した後、直ちに新世代MBTの開発に着手した。
そして早くも1991年末にNORINCOは「90-II式戦車」と呼ばれる新世代MBTの試作車を公表したが、これは85-IIM式戦車と同様にパキスタン軍での採用を前提とした輸出用MBTであった。

90-II式戦車は「アル・ハーリド」(Al-Khalid:「アッラーの剣」の異名で知られるイスラーム初期の武将)の名称で90年代末にパキスタン軍に採用され、パキスタンを代表する軍需企業であるタクシラ重工業において2000年代初めから量産が開始されている。
またNORINCOはパキスタン以外の国にも90-II式戦車の売り込みを図っており、これまでにバングラデシュ、モロッコ、ミャンマーで採用されている。

一方中国軍向けの新世代MBTの開発は、NORINCOが90-II式戦車の開発において導入・確立したコンポーネントをベースに同時に並行して進められた。
本車は1999年10月1日の建国50周年記念軍事パレードで公開することが予定されたため、それまでに制式化と一定数の生産を行うことが要求され、充分な開発期間を与えられずに大急ぎで開発が進められた。

そして1998年にはまだ不完全ではあるものの一応実用レベルの車両が完成し、「98式戦車」として制式化されて量産が開始された。
98式戦車は予定通り翌年の建国50周年記念パレードに参列し、従来の中国軍MBTとは一線を画すその先進的なスタイルは各国の軍事関係者の注目を集めた。

確かに98式戦車は様々な新機軸を導入した新世代のMBTではあったが、建国50周年記念パレードに間に合わせるべく無理なペースで開発を進めたため各部に不具合を抱えており、そのまま量産を行うには完成度が低かった。
このため98式戦車は本格的な量産を行わず、少数生産を続けながら不具合の改修を行っていくことになった。

98式戦車の実用改良型の開発は直ちに開始され、「99式戦車」の制式名称が与えられて2000年から量産が開始されている。
これに伴って98式戦車の生産は短期間で終了し、約80両という少数生産に終わったといわれている。
99式戦車は2001年中に約40両が部隊配備され、その後も月産10両程度のペースで生産が続けられている模様である。

99式戦車は基本的なコンポーネントは90-II式戦車から受け継いでいるが車体、砲塔共に設計し直され、車体長が若干延長されたものとなり戦闘重量は50t超となっている。
このため、99式戦車の外観は90-II式戦車とは印象的にかなり異なっている。
99式戦車の車体形状は旧ソ連製のT-72戦車のものに良く似ており、車体の前面上部にV字型の大柄な波切り板と跳弾リブが設けられている点もT-72戦車と同様である。

車体前面上部の装甲板には複合装甲が導入されており、KE(運動エネルギー)弾、CE(化学エネルギー)弾のいずれに対しても高い防御力を発揮する。
この部分の装甲防御力はKE弾に対してはRHA(均質圧延装甲板)換算で480mm厚、CE弾に対してはRHA換算で550mm厚に相当するという。

99式戦車の砲塔は、88式戦車までの中国製MBTに採用されていた半球形の鋳造製のものとは大きく異なっており、ドイツのレオパルト2戦車やアメリカのM1エイブラムズ戦車などの西側戦後第3世代MBTの砲塔と同じく、平面で構成された圧延防弾鋼板の溶接構造になっている。
砲塔前半部にはセラミックを封入した複合装甲が導入されており、KE弾に対してはRHA換算で640mm厚、CE弾に対してはRHA換算で790mm厚に相当する装甲防御力を有しているという。

この値が事実であれば、レオパルト2A4/A5戦車やM1A1/A2戦車が装備するドイツのラインメタル社製の44口径120mm滑腔砲のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の直撃に耐えられる可能性が高く、現用MBTの中でもかなり高いレベルの装甲防御力を備えていることになる。
また99式戦車の砲塔前半部の複合装甲部分は着脱が可能なモジュール構造となっており、被弾によって破損した際にこの部分を素早く交換することが可能になっている。

99式戦車の砲塔後半部周囲には、OVM(車外装備品)を収納するための格子状のバスケットが設けられている。
これは79式戦車以降の中国製MBTの標準装備となっているもので、CE弾対策の空間装甲を兼ねている。
砲塔の左右側面には5連装の76mm発煙弾発射機をそれぞれ装備しており、敵から身を隠す煙幕を展開するようになっている。
また従来の中国製MBTと同様、マフラー内に燃料を噴射して煙幕を展開するシステムも装備している。

なお、99式戦車はさらに防御力を強化するため生産途中から砲塔の前半部に、A5型以降のレオパルト2戦車に装着されているショト装甲と良く似た楔形の追加装甲が装着されるようになった。
ただしショト装甲がCE弾対策を重視した空間装甲であるのに対し、99式戦車の楔形追加装甲は複合装甲とERA(爆発反応装甲)を組み合わせたもので、CE弾だけでなくKE弾にも高い防御力を発揮するといわれる。

また楔形追加装甲の装着と併せて、99式戦車は砲塔後半部周囲のバスケットと車体前面上部にERAのブロックをびっしりと装着するようになり、CE弾に対する防御力を大幅に強化している。
この装甲強化タイプの99式戦車には、「99G式戦車」の名称が与えられている。
ちなみに”G”は、中国語で「改良」を表す”Găiliáng”の頭文字を採ったものである。

99G式戦車の楔形追加装甲やERAブロックはその後も改良が続けられており、生産時期によって形状に違いが見られる。
99式戦車のエンジンは出力1,200hpのV型12気筒液冷ディーゼル・エンジンが搭載されているが、このエンジンの詳細については資料によって記述が異なっておりはっきりしない。

中国が船舶用にライセンス生産を行っているドイツのMTU社製のMT396ディーゼル・エンジンを搭載しているという説や、イギリスのパーキンス社製の「コンドー」(Condor:コンドル)CV12-1200TCAディーゼル・エンジンを積んでいるという説があるが、これらのエンジンはいずれも90-II式戦車の試作車に搭載してテストされた経験がある。
いずれにしろ、99式戦車は従来の中国製MBTに比べて大幅にエンジン出力が向上しており、路上最大速度70km/hという高い機動性能を発揮する。

さらに99G式戦車では、国内開発された出力1,500hpのWR703/150HB V型12気筒液冷ディーゼル・エンジンに換装されており、路上最大速度80km/hという現用MBTで最高レベルの機動性能を実現している。
このWR703/150HBディーゼル・エンジンは、レオパルト2戦車や韓国のK1戦車に採用されているMTU社製のMB870系列ディーゼル・エンジンをベースに開発されたといわれている。
99式戦車の変速機は、国内開発された前進7段/後進1段の手動変速機を採用している。

この国産変速機は、輸出向けの90-II式戦車で採用されているフランスのSESM社製のESM500自動変速機(前進5段/後進2段)と違って超信地旋回を行うことができず、変速も手動式のため操作が難しく加速性能も劣るといわれている。
しかしコンポーネントを輸入に頼ると国際情勢の影響で調達に支障が生じるリスクがあるため、99式戦車では性能的に劣っていても国産コンポーネントを採用することを優先しているようである。

99式戦車の主砲は、T-72戦車の主砲である125mm滑腔砲2A46Mをベースに国内開発された51口径125mm滑腔砲ZPT-98が採用されている。
主砲弾薬は分離薬莢式で、劣化ウラン弾芯を持つAPFSDS、HEAT(対戦車榴弾)、HE-FRAG(破片効果榴弾)の3種類の弾種が用意されており、APFSDSを使用した場合砲口初速1,730m/秒、射距離2,000mで460mm厚のRHAを貫徹することが可能である。

砲弾の装填は90-II式戦車と同じく、T-72戦車のカセートカ・システムを参考に国内開発された自動装填装置を用いて行うようになっており、装填手が不要となったため乗員は3名に減らされている。
砲塔の直下には22発の砲弾と半燃焼式薬莢を充填した回転式トレイが設けられており、必要な弾種を機械式ラマーで拾い上げて砲尾に装填するようになっている。

自動装填装置を使用した場合の主砲の発射速度は10~12発/分となっており、緊急時には乗員が手動で砲弾の装填を行うこともでき、その場合の発射速度は2発/分となる。
副武装は、主砲の右側同軸に旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTを国産化した86式7.62mm機関銃を1挺、砲塔上面右側の車長用キューポラ前方に、旧ソ連製の12.7mm重機関銃NSVTを国産化した85式12.7mm重機関銃を1挺装備しているが、生産途中から車長用機関銃が新型の02式14.5mm重機関銃に変更されている。

この02式14.5mm重機関銃は、旧ソ連製の14.5mm重機関銃KPVを国産化した58式14.5mm重機関銃とは外観が異なっており、中国が独自に開発した新設計のものと思われる。
14.5mm重機関銃の弾丸は12.7mm重機関銃の約2倍の運動エネルギーを持っており、敵歩兵はもちろん車両や建造物、ヘリ等への攻撃でも大きな威力を発揮する。

99式戦車のFCS(射撃統制システム)は、90-II式戦車に採用されているイスラエル製のISFCS-212をベースに改良を施したもののようで、新たに車長用キューポラの前に展望式サイトが装備されており、移動目標に対する走行間射撃の命中精度は90-II式戦車の71%から80%に向上しているともいわれている。
また砲塔上面左側の砲手用ハッチの後方には、中国が独自に開発したJD-3アクティブ防御システムが装備されている。

このシステムはレーザー測遠機、レーザー検知機、レーザー照射機から構成されており、敵が対戦車兵器を使用する際に照射する照準・測距用レーザーを感知して警報を発すると共に、砲塔側面の発煙弾発射機から自動的に煙幕を展開して車体を隠蔽するようになっている。
さらに敵のレーザー機器に対して強力な撹乱・破壊レーザーを照射して機器を使用不能にし、照準手にダメージを与える機能も備えているという。


<99式戦車>

全長:    11.00m
車体長:   7.30m
全幅:    3.40m
全高:    2.40m
全備重量: 52.0t
乗員:    3名
エンジン:  4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 1,200hp
最大速度: 70km/h
航続距離: 600~650km
武装:    51口径125mm滑腔砲ZPT-98×1 (41~42発)
        85式12.7mm重機関銃×1 (300発)
        86式7.62mm機関銃×1 (2,000発)
装甲:    複合装甲


<99G式戦車>

全長:    11.00m
車体長:   7.30m
全幅:    3.40m
全高:    2.40m
全備重量: 54.0t
乗員:    3名
エンジン:  WR703/150HB 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 1,500hp
最大速度: 80km/h
航続距離: 600~650km
武装:    51口径125mm滑腔砲ZPT-98×1 (41~42発)
        85式12.7mm重機関銃または02式14.5mm重機関銃×1 (300発)
        86式7.62mm機関銃×1 (2,000発)
装甲:    複合装甲


<参考文献>

・「パンツァー2006年8月号 中国の最新鋭MBT 98式戦車の実力と可能性(1)」 佐藤慎ノ亮 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年9月号 中国の最新鋭MBT 98式戦車の実力と可能性(2)」 佐藤慎ノ亮 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」  アルゴノート社
・「パンツァー2001年3月号 近代化の歩みを進める最近の中国戦車」 宇垣大成 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年8月号 近代化が進む中国軍の実力と課題」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2011年11月号 特集 10式戦車」 三鷹聡/竹内修 共著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年6月号 99G式戦車を推理する」 木元寛明 著  アルゴノート社
・「パンツァー2017年2月号 現代戦車の基礎知識」 毒島刀也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年1月号 世界の第三世代MBT」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年8月号 最近のMBT事情」 諏訪守 著  アルゴノート社
・「パンツァー2004年10月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2011~2012」  アルゴノート社
・「グランドパワー2004年9月号 中国戦車開発史(4)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社


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