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96式戦車





NORINCO(中国北方工業公司)は1980年代後期から、中国と友好関係にあったパキスタンからの求めに応じて、中国軍向けに開発した88式戦車をさらに発展させた「85式戦車」と呼ばれる新型MBTの開発に着手した。
85式戦車は当初88式戦車と同じく105mmライフル砲を装備していたが、パキスタンは長年対立しているインドが旧ソ連からT-72戦車を導入したのに対抗して、85式戦車にT-72戦車の主砲である51口径125mm滑腔砲2A46を装備することを要求した。

これに応じてNORINCOは体制末期の旧ソ連から125mm滑腔砲2A46とその弾薬のライセンス生産権を購入し、85式戦車および将来の中国軍MBTに装備すべく国産化を進めた。
1992年後期には85式戦車に国産の125mm滑腔砲と、T-72戦車の「カセートカ」(Kassetka:カセット)自動装填装置を参考に国内開発された自動装填装置を装備した「85-IIM式戦車」と呼ばれる試作車が完成し、同年末まで運用試験を行った後にパキスタン軍に採用された。

一方、中国軍も88式戦車の性能不足を認識しており、1990年からパキスタン軍向けにNORINCOが開発を進めていた「アル・ハーリド戦車」(中国名:90-II式戦車)で導入・確立されたコンポーネントをベースに、中国軍向けの新世代MBT(後の98式/99式戦車)の開発に着手した。
しかしこの新世代MBTは様々な新機軸を導入したために、実用化までには長い期間を要することが見込まれたため、それまでの繋ぎとして85-IIM式戦車をベースに暫定的な新型MBTを開発・生産することが決定された。

この新型MBTの名称は、当時配備が進められていた88式戦車の最新型である88B式戦車に続く型式という意味で、当初「88C式戦車」とされていた。
しかし構造的にはベースとなった車体と動力装置、転輪・履帯を含む走行装置の一部を除けば両者には共通点が無く、機動力面以外では事実上全く別の戦車といえる。
88C式戦車は1996年に開発が完了し、同年から量産が開始されている。

なお1996年に量産が開始されたのに合わせて、88C式戦車は「96式戦車」に制式名称が改められている。
96式戦車は当初400両で生産を終了し、本命の新世代MBTが実用化された時点でそちらに生産を切り替える予定であった。
しかし本命の新世代MBTとして2000年から量産が開始された99式戦車は、高性能である反面製造コストが非常に高く必要な数を揃えるのが困難であった。

このため99式戦車に比べて性能的に劣るものの、相対的に製造コストが安い96式戦車の生産も並行して続けられることになった。
96式戦車は2007年の時点で少なくとも1,500両が生産されており、重点集団軍の戦車部隊に配備されている。
また現在、北京市昌平区陽方鎮にある北京戦車博物館には96式戦車が1両屋外展示されている。

96式戦車は従来の中国軍MBTに採用されていた半球形の鋳造製砲塔に代えて、西側の戦後第3世代MBTのような平面で構成された圧延防弾鋼板の溶接製砲塔を採用しており、車体と砲塔の前面には国内開発された複合装甲が導入されている。
96式戦車の装甲防御力については、車体前面がKE(運動エネルギー)弾/CE(化学エネルギー)弾に対してRHA(均質圧延装甲板)換算で350mm/450mm、砲塔前面が500mm/650mm程度といわれている。

96式戦車の戦闘重量は複合装甲や125mm滑腔砲、自動装填装置を導入した関係から、乗員数が1名減少したにも関わらず88B式戦車の38.5tから41.5tへと増大したが、エンジンは同じもの(12150ZL V型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジン、出力730hp)を搭載しているため、出力/重量比は18.96hp/tから17.59hp/tへと逆に低下している。

ただし路上最大速度は57km/hを維持しており、要求された機動力は何とかクリアしているという。
主砲火力は125mm滑腔砲と新型FCS(射撃統制システム)のために装甲貫徹力、射撃精度共に相当な向上を見ている。
主砲の51口径125mm滑腔砲はT-72戦車に装備されている125mm滑腔砲2A46とほぼ同じもので、砲身に非鉄金属製のサーマル・スリーブが装着されているのも同様である。

主砲弾薬は分離薬莢式で劣化ウラン弾芯を持つAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、HEAT(対戦車榴弾)、HE-FRAG(破片効果榴弾)の3種類が用意されており、この内のAPFSDSでは砲口初速1,730m/秒を実現して、射距離2,000mで460mm厚のRHAを貫徹できる。
また、旧ソ連製の125mm弾薬をそのまま使用することもできる。

96式戦車の主砲弾薬搭載数は42発(41発という説も)とされており、その内22発は即用弾として自動装填装置の弾薬トレイに装填される。
砲塔内には右側に車長席、左側に砲手席が設けられている。
砲塔上面右側には車長用キューポラ、左側には砲手用ハッチが備えられており、砲手用照準機はハッチ前方の砲塔上面に設けられている。

96式戦車は主砲だけでなく副武装も新型のものに変更されており、主砲と同軸に86式7.62mm機関銃(旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTの国産型)を1挺、車長用キューポラ前方に85式12.7mm重機関銃(旧ソ連製の12.7mm重機関銃NSVTの国産型)を1挺装備している。
ただし生産初期の車両は、従来と同じく59式7.62mm機関銃と54式12.7mm重機関銃を装備していたようである。
副武装の弾薬搭載数は12.7mm機関銃弾が300発、7.62mm機関銃弾が2,000発となっている。

96式戦車に搭載されているFCSは、88B式戦車と同じイスラエル製の「ISFCS-212」(Image-Stabilized Fire Control System 212:映像安定化射撃統制システム212型)と呼ばれるもので、レーザー測遠機内蔵の砲手用安定化サイトと弾道コンピューター、制御パネル、砲塔上面後端部の環境センサーを始めとする各種のセンサー等から成り、中国軍MBTとしては初めて低速の移動目標に対する走行間射撃能力を実現した。

車体の基礎構造部分と動力装置を88B式戦車から引き継いだとはいえ、この96式戦車は攻撃力と装甲防御力では明らかに1世代進歩した戦車であり、同車によって中国軍MBTもようやく1990年代の後半期には何とか戦後第3世代の水準に手が届くようになったわけである。
なお96式戦車は2005年以降、99式戦車の改良型である99G式戦車と同様の追加装甲を装着したタイプに生産が切り替えられており、この改良型は「96G式戦車」もしくは「96A式戦車」と呼ばれる。

96G式戦車の砲塔前部には、ドイツのレオパルト2A5/A6戦車の砲塔前部に装着されているショト装甲とよく似た楔形の追加装甲が装着されている。
ただしショト装甲がCE弾対策を重視した空間装甲であるのに対し、96G式戦車の楔形追加装甲は複合装甲とERA(爆発反応装甲)を組み合わせたもので、CE弾だけでなくKE弾にも高い防御力を発揮するといわれる。

また楔形追加装甲の装着と併せて、96G式戦車は砲塔後半部周囲の鋼製バスケットと車体前面上部にERAのブロックをびっしりと装着するようになり、CE弾に対する防御力を大幅に強化している。
さらに96G式戦車では砲手用サイトが新しい大型のものに換装されており、夜間戦闘能力が向上しているという。


<96式戦車>

全長:    10.28m
車体長:   6.325m
全幅:    3.372m
全高:    2.30m
全備重量: 41.5t
乗員:    3名
エンジン:  12150ZL 4ストロークV型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 730hp/2,000rpm
最大速度: 57km/h
航続距離: 600km
武装:    51口径125mm滑腔砲×1 (41〜42発)
        85式12.7mm重機関銃×1 (300発)
        86式7.62mm機関銃×1 (2,000発)
装甲:    複合装甲


<参考文献>

・「パンツァー2008年7月号 T-72戦車 開発・構造とそのバリエーション(3)」 白井和弘 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」  アルゴノート社
・「パンツァー2001年3月号 近代化の歩みを進める最近の中国戦車」 宇垣大成 著  アルゴノート社
・「パンツァー2017年3月号 珠海航空展2016 出品された中国製AFVを見る」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2011〜2012」  アルゴノート社
・「グランドパワー2004年8月号 中国戦車開発史(3)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2004年9月号 中国戦車開発史(4)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」  デルタ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社
・「世界の主力戦車カタログ」  三修社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研


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