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83式152mm自走榴弾砲





54-1式122mm自走榴弾砲で国産の自走榴弾砲の開発に成功した中国であったが、この車両は単に装甲兵員輸送車の車内に架台を設けて、榴弾砲を載せただけという前近代的な習作であることは中国自身熟知しており、この開発で得たノウハウを基にして、完全密閉式の旋回砲塔に152mm榴弾砲を備える近代的な自走榴弾砲の開発に着手した。

本車の開発は1970年代半ば頃からNORINCO(中国北方工業公司)の手で進められ、1983年に「83式152mm自走榴弾砲」として制式化されている。
83式自走榴弾砲は、1984年10月に開かれた国慶節を祝う軍事パレードにおいて西側に初めて存在が確認され、同年末から配備が開始されている。

本車は、主砲の152mm榴弾砲が旧ソ連の2S3「アカーツィヤ」152mm自走榴弾砲の主砲と同系であるため、どことなく2S3自走榴弾砲の面影が感じられるが決してコピーではなく、砲塔も車体も全く別物の中国製オリジナルである。
83式自走榴弾砲の生産はすでに終了しているがその生産数は不明で、諸外国への輸出も明らかにはされていない。

本車の車体は他の車両から流用したものではなく、専用に開発されたものが用いられている。
車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体後部が砲塔を搭載した戦闘室という近代型自走砲に共通するレイアウトを採っており、西側の自走榴弾砲と比べても遜色の無いまとまりを見せている。

サスペンションには標準的なトーションバー(捩り棒)が用いられ、足周りは片側6個の複列式転輪と3個の複列式上部支持輪で構成されており、起動輪は前方配置となっている。
操縦手席の上部には専用の乗降用ハッチが設けられており、車体後面には乗員の乗降や弾薬補給に使用する右開き式の大型ドアが設けられている。

主砲である29口径152mm榴弾砲は、旧ソ連から供与された牽引式152mm榴弾砲D-20のコピー生産型である62式牽引式152mm榴弾砲をベースとして、中国が独自に改良を加えて開発した66式牽引式152mm榴弾砲を車載化したもので、砲身の中間に排煙機が取り付けられると共に、駐退復座機を砲身の下側に取り付けるなどの改造が加えられている。
砲塔は全周旋回が可能で、主砲の俯仰角は−5〜+63度となっている。

砲塔は車長、砲手、装填手2名の計4名を収容する大きなもので、砲塔内には主砲を挟んで右側に車長席、左側に砲手席が設けられており、後部左右に装填手2名がそれぞれ位置する。
車長席上には、全周にペリスコープを配したキューポラが設けられている。
砲塔の左右側面と後面にはヴィジョン・ブロックとガンポートを1基ずつ備えたハッチが設けられており、砲塔内の乗員はここから乗降を行う。

主砲の弾薬は牽引砲と同じものが用いられ、通常榴弾を用いた場合の砲口初速は655m/秒で最大射程は17,230mと伝えられており、この砲に用いるために開発されたMP-152ロケット補助榴弾を使用した場合はさらに射程が延長され21,880mに達する。
発射速度は人力装填のため4発/分とされており、このあたりは自動装填装置を備える西側の自走榴弾砲と比べると見劣りがする。

FCS(射撃統制システム)は直接照準機とパノラミック照準機を備えており、夜間視察機材も標準装備となっている。
また無線装置として889D無線機と803車内通信装置を装備しているが、その他のシステム等は明らかにされていない。

自衛用として砲塔には40式対戦車ロケット弾の発射機を備え、59式7.62mm機関銃を主砲下側に同軸装備とし、車長用キューポラには54式12.7mm重機関銃を対空用として備えている。
本車の派生型としては89式122mm自走多連装ロケット・システムと、120mm滑腔砲を装備する89式対戦車自走砲に加えて、762式425mm地雷処理ロケット・システム、塹壕掘削車、試作のみに終わった130mm自走加農砲に車体が流用されている。

すでに本車の後継として開発された88式(PLZ-45)155mm自走榴弾砲が実戦化されているが、予算等の問題から本格的な生産は行われていないようで旧式化は目立つものの当分、この83式自走榴弾砲が中国軍の機甲砲兵の主力として運用が続けられるものと思われる。
ただ主砲の長砲身化やFCSの新型化、改良型弾薬の研究も進められているものと思われる。


<83式152mm自走榴弾砲>

全長:    7.33m
車体長:   6.882m
全幅:    3.236m
全高:    3.502m
全備重量: 30.0t
乗員:    5名
エンジン:  12150L 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 520hp/2,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 450km
武装:    66式29口径152mm榴弾砲×1 (30発)
        54式12.7mm重機関銃×1 (500発)
        59式7.62mm機関銃×1 (1,000発)
装甲厚:   最大10mm


<参考文献>

・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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