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59式戦車


●59式戦車




1953年に朝鮮戦争が休戦した後、旧ソ連は西側陣営に対する東アジアでの防壁として中国軍を強化する必要性を強く認識し、東欧の親ソ諸国にも先立って自国製の新型兵器を中国に供与すると共に、国産化への援助も積極的に進めた。
すでに朝鮮戦争中に中国にはT-34-85中戦車が大量に供給されており、「58式戦車」の名称で中国軍機甲部隊の主力MBTとなっていた。

続いて当時のソ連軍の主力MBTであったT-54中戦車が中国に供給されるようになり、1956年にはT-54A中戦車のライセンス生産権が中国に譲渡された。
これに伴って内モンゴル自治区の包頭に中国最初の戦車工場である第617工場が設立され、1957年からT-54A中戦車のノックダウン生産が開始された。

そして1961年には、T-54A中戦車の完全な国内生産を行うことに成功した。
T-54A中戦車のライセンス生産型には「59式戦車」(WZ-120)の呼称が与えられ、1980年代初頭までに少なくとも9,500両前後が生産されて中国軍の戦車部隊におよそ6,000両が配備された他、アルバニア、カンボジア、ヴェトナム、北朝鮮、イラン、イラク、パキスタンなどの国に少なくとも3,400両が輸出されている。

59式戦車の車体は原型となったT-54A中戦車と同じく圧延防弾鋼板の溶接構造で、装甲厚や内部配置もT-54A中戦車と同一であった。
主砲の56口径100mmライフル砲D-10Tは「59式100mm戦車砲」の名称でライセンス生産され、砲身先端には砲口制退機が装着されていた。
砲の俯仰角は、−4〜+17度となっていた。

使用弾薬は長年に渡ってHVAP(高速徹甲弾)が主力だったが、1980年代の前半期にはNORINCO(中国北方工業公司)が69式戦車用として開発した「AP100-2」と呼ばれる100mmAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が導入された。
このAP100-2を使用した場合砲口初速1,480m/秒、射距離2,400mで傾斜角65度の150mm厚RHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能であった。

59式戦車のエンジンは、T-54A中戦車に搭載されていたV-54ディーゼル・エンジンを国産化した12150L V型12気筒液冷ディーゼル・エンジンで、出力は原型と同じ520hpであった。
変速機は機構は簡単だが堅牢性の高いクラッチ・ブレーキ式で、前進5段/後進1段の変速が可能であった。
足周りは、当時のソ連戦車の標準であった片側5個の大直径転輪とトーションバー式サスペンションの組み合わせで、上部支持輪は備えていなかった。

転輪と各バーを結合しているアームには、ショック・アブソーバーが装着されていた。
履帯はT-54A中戦車と同じシングルピン/シングルブロック型のものが装着されたが、後に導入されたゴムパッド付きのダブルピン/ダブルブロック型履帯を装着した車両も見られた。
59式戦車の後期生産車では車長用の小型赤外線暗視装置および、砲身基部に装着された砲手用大型アクティブ赤外線暗視装置の装備が行われた。


●59-I式戦車




1970年代末から80年代初頭にかけて59式戦車の後期生産車に部分的な改修が施され、砲塔の左右側面に各4基ずつの発煙弾発射機が取り付けられ、主砲防盾の上部に82式レーザー測遠機「揚州」(S-83-IIとも呼ばれる)を装備するものが現れた。
82式レーザー測遠機の有効測定距離は300〜3,000mで、誤差は10m以内である。

さらにこれに分割式のサイドスカートを取り付けた仕様の車両が「59-I式戦車」(WZ-120A)と名付けられ、1980年頃から初期生産車を含む既存の59式戦車の相当数が第617工場でこの仕様に改修されていった。
59-I式戦車は1979年の中越戦争で初めて実戦投入され、その後イラクに700両が輸出されたと伝えられている。


●59-II式戦車




1980年代の前半期にはイスラエルから、西側戦後第2世代MBTの標準武装となったイギリスの王立造兵廠製の51口径105mmライフル砲L7とその弾薬技術が中国に移転されており、1983年頃までに59式戦車にこれを導入したもう1つの発達型が登場している。
「59-II式戦車」(WZ-120B)と名付けられた近代化改修型がそれで、従来の59式100mmライフル砲に代えて105mmライフル砲L7のライセンス生産型である81式51口径105mmライフル砲を装備していた。

主砲の弾薬にはやはり1980年代の前半期にAPFSDS、APDS(装弾筒付徹甲弾)、HEAT(対戦車榴弾)、HESH(粘着榴弾)が開発され、車体の方にも2軸砲安定化装置や弾着偏差測定機能を有するスポットFCS(射撃統制システム)、自動消火装置が導入される等、攻撃・防御双方の機能がグレードアップされていた。

現在、中国軍の戦車部隊では依然としておよそ5,500両余りの59式戦車が保持されているが、そのほとんどはすでに1980年代から90年代の初頭にかけて59-I式もしくは59-II式いずれかの仕様に改修されている。
1984年には、金属製のサーマル・スリーブを装着した改良型の83式51口径105mmライフル砲を装備し、組み立て式のダブルピン履帯を装着した改良型の「59-IIA式戦車」も登場している。


●59D式戦車




ロシア軍は旧式化したT-55中戦車の装甲防御力を強化するため、「コンタークト(接触)5」と呼ばれるERA(爆発反応装甲)を砲塔の前半部と車体前部に取り付ける改修を実施しており、この改修を受けたT-55中戦車は「T-55MV」と呼ばれている。
中国軍も1990年代に入って旧式化した59式戦車の装甲防御力を強化するため、ロシアの技術協力を受けて「コンタークト5」を参考に国内開発されたERAを砲塔と車体に取り付ける改修を実施している。

この改修を受けた車両は「59D式戦車」(WZ-120C)と呼ばれており、中国軍が保有する59式戦車は順次この仕様に改修されている。
この改修により、L7系105mmライフル砲が発射するAPFSDSに射距離2,000mで抗堪する装甲防御力を実現したという。

また59D式戦車では主砲が改良型の83式51口径105mmライフル砲に換装されると共に、エンジンが69式戦車のものと同じ出力580hpの12150L-7BWディーゼル・エンジンに強化され、路上最大速度は59式戦車の45km/hから50km/hに向上している。


●59G式戦車




NORINCOは、59式戦車の砲塔を125mm滑腔砲を装備する96G式戦車と同様の砲塔に換装した近代化改修型「59G式戦車」を開発しており、中国軍が保有する59式戦車の一部がこの仕様に改修されている。
59G式戦車の砲塔には、旧ソ連製のT-72戦車に装備されている125mm滑腔砲2A46をベースに国内開発された51口径125mm滑腔砲と、国内開発された半自動装填装置が搭載されており、砲塔前面には複合装甲が導入されている。

また最近になってバングラデシュ軍が保有する59式戦車を59G式戦車に改修することを決定し、約300両の改修をNORINCOに発注している。
一方パキスタンでは、1990年からNORINCOの技術支援を受けて保有する59式戦車の近代化改修計画を進めており、まず59式戦車のFCSを新型のものに換装し、成形炸薬弾に対する防御力を強化するために中国製のERA(爆発反応装甲)を車体・砲塔の主要部に装着する改修がタクシラ重工業の手で実施された。

続いて2003年から59式戦車の主砲をアル・ハーリド戦車と同じ中国製の125mm滑腔砲に換装し、エンジンも85-IIAP式戦車と同じ出力730hpの12150ZL V型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジンに換装する近代化改修がタクシラ重工業の手で実施されており、この改修車には「アル・ザラー」(Al-Zarrar)の呼称が与えられている。

またイランでは、保有する59式戦車の主砲をアメリカ製のM60戦車と同じ51口径105mmライフル砲M68に換装し、エンジンはT-72戦車と同じ出力780hpのV-46-6 V型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジンに換装し、FCSもスロヴェニアのフォトナ社製のEFCS-3に換装した近代化改修型を1990年代に開発しており、「サフィール74」(Safir-74)の呼称を与えている。
サフィール74戦車はイラン軍と革命防衛隊で運用されている他、20両がスーダンに輸出されている。


<59式戦車>

全長:    9.00m
車体長:   6.04m
全幅:    3.27m
全高:    2.59m
全備重量: 36.0t
乗員:    4名
エンジン:  12150L 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 520hp/2,000rpm
最大速度: 45km/h
航続距離: 430km
武装:    59式56口径100mmライフル砲×1 (34発)
        54式12.7mm重機関銃×1 (200発)
        59式7.62mm機関銃×2 (3,500発)
装甲厚:   20〜203mm


<59-I式戦車>

全長:    9.00m
車体長:   6.04m
全幅:    3.307m
全高:    2.59m
全備重量: 36.0t
乗員:    4名
エンジン:  12150L 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 520hp/2,000rpm
最大速度: 45km/h
航続距離: 430km
武装:    59式56口径100mmライフル砲×1 (34発)
        54式12.7mm重機関銃×1 (200発)
        59式7.62mm機関銃×2 (3,500発)
装甲厚:   20〜203mm


<59-II式戦車>

全長:    9.194m
車体長:   6.04m
全幅:    3.307m
全高:    2.59m
全備重量: 36.0t
乗員:    4名
エンジン:  12150L 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 520hp/2,000rpm
最大速度: 45km/h
航続距離: 430km
武装:    81式51口径105mmライフル砲×1 (38発)
        54式12.7mm重機関銃×1 (200発)
        59式7.62mm機関銃×2 (3,500発)
装甲厚:   20〜203mm


<59D式戦車>

全長:    9.194m
車体長:   6.04m
全幅:    3.307m
全高:    2.59m
全備重量: 37.0t
乗員:    4名
エンジン:  12150L-7BW 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 580hp/2,000rpm
最大速度: 50km/h
航続距離: 500〜600km
武装:    83式51口径105mmライフル砲×1 (44発)
        54式12.7mm重機関銃×1 (200発)
        59式7.62mm機関銃×2 (3,500発)
装甲厚:   20〜203mm


<参考文献>

・「パンツァー2001年3月号 近代化の歩みを進める最近の中国戦車」 宇垣大成 著  アルゴノート社
・「世界のAFV 2011〜2012」  アルゴノート社
・「グランドパワー2003年4月号 ソ連戦車T-54/55 (2)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2004年6月号 中国戦車開発史(1)」 古是三春 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」  デルタ出版
・「ソビエト・ロシア 戦車王国の系譜」 古是三春 著  酣燈社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社


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