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4K7FA装甲兵員輸送車





●開発

オーストリア陸軍は1961~69年にかけて、各種派生型を含めて合計445両の4K4FA装甲兵員輸送車シリーズを導入し主力APC(装甲兵員輸送車)として運用した。
4K4FA装甲兵員輸送車は、それまでオーストリア陸軍が主力APCとして用いていた半装軌式のM3ハーフトラックに比べると不整地突破能力が高く、戦闘室が完全密閉式なため乗員の防護能力も優れていたが、運用を続ける内に兵員室の内部容積や機動力の不足などの問題点が指摘されるようになった。

このため、オーストリア政府は1970年代半ばに4K4FA装甲兵員輸送車の改良型の開発を計画した。
この改良型APCの開発は、4K4FA装甲兵員輸送車の開発・生産メーカーであるオーストリア・ザウラー製作所を1969年に吸収合併したシュタイアー・ダイムラー・プフ社(現GDELSシュタイアー社)が担当したが、同社は改良型APCを開発するに当たって、ザウラー製作所が4K4FA装甲兵員輸送車をベースにオーストリア陸軍向けに開発したSK105キュラシェーア軽戦車のコンポーネントを流用することで開発・製造コストの低減を図った。

「4K7FA」と名付けられた改良型APCの試作車は1976年に完成したが、4K7FA装甲兵員輸送車は車長兼銃手席の頭上に、4K4FA装甲兵員輸送車のIFV(歩兵戦闘車)ヴァージョンである4K4FA-G2歩兵戦闘車のものよりも大型の1名用全周旋回式砲塔を搭載していた。
この砲塔には武装として85口径20mm機関砲204GKと7.62mm機関銃MG74が同軸装備されており、さらに倍率切替式照準機と発煙弾発射機を装備していた。

オーストリア陸軍の手で実施された評価試験の結果、オーストリア政府は4K7FA装甲兵員輸送車の陸軍への採用を決定し1977年からシュタイアー社の手で、既存の4K4FA装甲兵員輸送車シリーズの4K7FA装甲兵員輸送車への改修作業が開始された。

最終的に105両の4K4FA装甲兵員輸送車シリーズが4K7FA装甲兵員輸送車に改修されたが、4K4FA装甲兵員輸送車シリーズとの互換性を考慮してか、4K7FA装甲兵員輸送車の生産型では結局20mm機関砲塔は採用されず、4K4FA-G1装甲兵員輸送車と同様に車長用キューポラ前方にピントルマウントを設けて、前面と左右側面を20mm厚の装甲板で構成された防盾で覆った12.7mm重機関銃M2が1挺装備された。

なお4K7FA装甲兵員輸送車はオーストリア陸軍での採用のみならず、海外にも多数が輸出されている。
本車の最大の顧客となったのはナイジェリアで250両を導入しており、それ以外にもマケドニアに10両、ボリヴィアに6両、ボツワナに3両が輸出された他、ギリシャでは「レオニダス」(Leonidas)の名称で4K7FA装甲兵員輸送車のライセンス生産が行われている。

ギリシャ政府は、陸軍がそれまで主力APCとして運用してきたアメリカ製のM113装甲兵員輸送車シリーズが旧式化したため、1970年代末に後継APCを導入することを計画し海外の兵器メーカーに対して提案を募った。
そしてギリシャ政府による選考の結果、イギリスのGKN社製のウォーリア歩兵戦闘車と4K7FA装甲兵員輸送車が陸軍の次期APCの最終候補として残った。

この両者のうち性能的にはウォーリア歩兵戦闘車の方が優れていたものの、4K7FA装甲兵員輸送車の方が調達価格が安価で、しかもメーカーのシュタイアー社がギリシャ国内でのライセンス生産を認めたため、ギリシャ政府は価格面と自国産業への波及効果を重視して、最終的に4K7FA装甲兵員輸送車を陸軍の次期APCとして採用することを決定した。

ギリシャ国内における4K7FA装甲兵員輸送車のライセンス生産は、シュタイアー社が1972年にテッサロニキに設立した子会社であるシュタイアー・ヘラス社(1987年にELVO社(Elliniki Viomihania Ohimaton:ギリシャ車両工業)に改組)が担当することになり、このライセンス生産型には「レオニダスI」の名称が与えられた。
なお「レオニダスI」という名称は、アギス朝のスパルタ王でありスパルタ随一の英雄といわれる「レオニダス1世」に因んでいる。

しかし当時のシュタイアー・ヘラス社は軍用車両の生産経験が無かったため、レオニダスI装甲兵員輸送車は当初10%程度の部品を国産化し、残りの部材をオーストリアより輸入するノックダウン生産に近いライセンス生産の形が採られた。
レオニダスI装甲兵員輸送車は1982~87年にかけて合計390両が生産されたが、さらにギリシャ政府は1987年にシュタイアー社との間で292両の追加生産契約を締結した。

この追加生産分は「レオニダスII」(アギス朝のスパルタ王である「レオニダス2世」に因む)と呼ばれ、生産初期は30%の部品をギリシャ国内で生産して残りの部材をオーストリアから輸入したが、段階的に国産化率を高めて最終的に完全な国産化が達成された。
レオニダス装甲兵員輸送車シリーズは合計で503両がギリシャ陸軍向けに生産された他、キプロスにレオニダスII装甲兵員輸送車が197両輸出されている。


●構造

4K7FA装甲兵員輸送車は原型となった4K4FA装甲兵員輸送車と比較して、車内レイアウトや基本構造は同一であるものの全長が原型の5.40mから5.87mへ0.47m延長され、車体側面の傾斜装甲の傾斜角が緩められて車内容積の増大が図られている。
4K7FA装甲兵員輸送車は傾斜装甲の傾斜角を緩めたことで避弾経始の効果が減少したため、車体側面の装甲防御力が若干低下しているが、元々装甲厚が14mmと薄いためその影響は軽微であるという。

それよりも、車内容積が増加して乗員の居住性が改善されたメリットの方がはるかに大きい。
また4K7FA装甲兵員輸送車は車体前面の装甲厚が原型の20mmから25mmに強化されているため、総合的な装甲防御力は原型よりも向上している。
さらに4K7FA装甲兵員輸送車は、原型では未装備であったNBC防護システムや機関室内の自動消火システムが標準装備されているため、装甲以外の面でも防御力が向上しているといえよう。

4K7FA装甲兵員輸送車は他にも細かい部分に改良が図られており、車長用キューポラに備えられているペリスコープの数が2基に増やされた他、車長用キューポラの後部に後ろ向きに4連装の発煙弾発射機が標準装備されるようになった。
また4K7FA装甲兵員輸送車は機動力の強化も図られており、パワーパックがSK105軽戦車と同様のものに換装されている。

このパワーパックはシュタイアー社製の7FA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力320hp)と、西ドイツ(当時)のZF社(フリードリヒスハーフェン歯車製作所)製のS6-80手動変速機(前進6段/後進1段)を組み合わせたもので、この新型パワーパックのおかげで4K7FA装甲兵員輸送車は原型よりも重量が2t以上増加しているにも関わらず、路上最大速度が原型の65km/hから70km/hへと向上している。

また4K7FA装甲兵員輸送車は燃料タンクの容量も原型の184リットルから約2倍の360リットルに増やされており、それに伴って路上航続距離が原型の370kmから520kmへと増大している。
4K7FA装甲兵員輸送車の足周りの構造は原型とほぼ同様で、片側5個の転輪をトーションバー(捩り棒)式サスペンションで懸架しているが、上部支持輪の数が原型の片側2個から3個に増やされている点が異なる。

なお、シュタイアー社は後にSK105軽戦車の近代化改修を手掛けた経験を活かして、4K7FA装甲兵員輸送車用のアップグレード・パッケージを開発しオーストリア政府に採用を提案している。
このアップグレード・パッケージの内容はZF社製の6HP600自動変速機(前進6段/後進1段)への換装、改良型空調システム、遠心分離式集塵システム、操縦手用光量増幅式暗視装置、容量250Ahのバッテリー、火災検知/消火システムの追加等であるが、オーストリア陸軍の4K7FA装甲兵員輸送車に導入されたかは不明である。


●派生型

☆4K7FA-KSPz装甲兵員輸送車
4K7FA-KSPz装甲兵員輸送車は、4K7FA装甲兵員輸送車の後部兵員室の左右側面に各2基ずつボールマウント式のガンポートを装備して、搭乗歩兵の乗車戦闘能力を向上させたタイプである。
4K7FA装甲兵員輸送車では搭乗兵員は4名ずつ向かい合わせに着座するようになっていたが、4K7FA-KSPz装甲兵員輸送車ではガンポートを使用して乗車戦闘を行えるよう、搭乗兵員は4名ずつ背中合わせに着座するように座席配置が変更されている。

また4K7FA-KSPz装甲兵員輸送車ではそれぞれのガンポートの上部および兵員室後部に2基、外部視察用のペリスコープが追加装備されている。
ちなみに「KSPz」はKampfschützenpanzerの略で、ドイツ語で「戦闘装甲車両」を意味する。

☆4K7FA-Fu装甲指揮車
4K7FA-Fu装甲指揮車は4K7FA装甲兵員輸送車の指揮車ヴァージョンで、車内に車長、操縦手、銃手、通信手2名、伝令2名の合計7名が乗車し、自動調整高出力無線機と2基の中型無線機を搭載している。

☆4KH7FA-Pi装甲工兵車
4KH7FA-Pi装甲工兵車は4K7FA装甲兵員輸送車の車体を流用して開発された工兵車両で、車体重量24tと原型よりも10t近く重量が増加している。
本車はこの種の車両としては小型であるがドーザー・ブレイド、油圧ショベル、地雷原処理装置、障害除去用爆薬を搭載する。

また自衛用に原型と同じく12.7mm重機関銃M2を1挺装備しており、車体中央部には装甲化された作業区画が増設されている。

☆4K7FA-San装甲救急車
4K7FA-San装甲救急車は、4K7FA装甲兵員輸送車の野戦救急車ヴァージョンである。
本車の乗員は操縦手と衛生要員の計2名で車内には救難航空機用医療設備が搭載されており、後部兵員室内に担架2床と軽傷者4名を収容することができる。

☆4K7FA-AMC81 81mm自走迫撃砲
4K7FA-AMC81自走迫撃砲は、4K7FA装甲兵員輸送車の車内にイギリス製の16口径81mm迫撃砲L16を搭載した火力支援車両である。
本車に搭載されている81mm迫撃砲L16の最大射程は5,650mで、4K3F装甲兵員輸送車ベースの火力支援車両である4K3FA-GrW1自走迫撃砲に搭載されている、アメリカ製の10.3口径81mm迫撃砲M29(最大射程3,490m)よりも大幅に射程が向上している。

また4K7FA-AMC81自走迫撃砲は4K3FA-GrW1自走迫撃砲に比べて車内容積が増大しているため、車内に81mm迫撃砲と3名の操砲要員の他、78発の81mm迫撃砲弾と弾道計算機を搭載している。

☆4K7FA-FSCV90戦闘偵察車
4K7FA-FSCV90戦闘偵察車は、4K7FA装甲兵員輸送車の車体上部にフランスのGIAT社(現ネクスター社)製の52口径90mm低反動滑腔砲CN-90-F4を装備する、同社製のTS90砲塔を搭載した偵察/戦車駆逐車ヴァージョンである。
このTS90砲塔は2名用で砲塔内左側に車長、右側に砲手が搭乗し、車長用には7基のペリスコープ、砲手用には5基のペリスコープと倍率5.9倍のM563テレスコピック・サイトがそれぞれ装備されている。

砲塔内には20発の90mm砲弾を収容することが可能で、使用弾種はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、HEAT(対戦車榴弾)、HE(榴弾)が用意されている。
主砲の左側には7.62mm機関銃が同軸装備されており、機関銃弾は2,000発が搭載される。
本車はサウジアラビアとカタールへの輸出用として開発されたが、結局採用されなかった。


<4K7FA装甲兵員輸送車>

全長:    5.87m
全幅:    2.50m
全高:    1.611m
全備重量: 14.8t
乗員:    2名
兵員:    8名
エンジン:  シュタイアー7FA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 320hp/2,300rpm
最大速度: 70km/h
航続距離: 520km
武装:    12.7mm重機関銃M2×1
        7.62mm機関銃MG74×1~4
装甲厚:   8~25mm


<参考文献>

・「パンツァー2013年6月号 オーストリアのザウラー装甲/戦闘兵車」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2009年5月号 オーストリア陸軍 SK105軽戦車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021~2022」  アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」  デルタ出版
・「世界の戦闘車輌 2006~2007」  ガリレオ出版
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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