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IV号戦車J型





●IV号戦車J型

IV号戦車J型はIV号戦車シリーズの最終型であり、1944年6月〜1945年3月にかけてH型に次いで多い1,758両が生産された。
といってもJ型は改良型とはいえず、生産性向上のための簡略化型であった。
J型での最大の変更点は、砲塔旋回用の補助エンジンの廃止である。

これは燃料タンクを増設して航続距離を増大させるためのもので、これによって航続距離は整地で210kmから320kmに増大している。
ただ当然その結果として砲塔の旋回は手動のみとなり、旋回速度が遅くなったため乗員には不評であった。
これに伴い車体後部の補助エンジン用マフラーは廃止され、当初開口部は蓋で塞がれていたが後に初めから開口されなくなった。

なおこのマフラーのあった部分には、車体左側面前部にあったジャッキ台が移設されている。
またIV号戦車H型で採用された戦闘室右側面のエアクリーナーは、被弾により破壊されてしまうケースが多発したためJ型では廃止された。
その他の改良点といえるのは砲塔上面の装甲厚が前部18mm、後部26mmに増強されたことである。

これは、航空攻撃に対抗したものと思われる。
また一部の車両ではヴェンチレイターの右側に近接防御兵器が追加されており、さらにエンジンなどを自力で交換するため、2t簡易クレーンを取り付けるための「ピルツ」(Pilz:キノコ)と呼ばれる台座3カ所が溶接されるようになった。

次に、簡易化された部分は細々と多岐に渡って生産中に順次採り入れられているが、全車両に共通というわけではない。
ざっと挙げると操縦手、無線手用ハッチ周りの跳弾板が溶接止めとなり、後に廃止された。
上部支持輪は、片側4個から3個に減らされている。

また車体後部のラジエイター用の冷却水交換口カバーが角形になり、後面板の補強リブの形状が単純化された。
マフラーも廃止され、筒型の単純な排気管となっている。
車体前面のシャックル掛けは別体となっていたのが、III号戦車のように車体側面板を延長した一体のものに変更された。

また車体左右側面のシュルツェンは対戦車銃対策は放棄して、成形炸薬弾対策だけに絞った金網のもの(信管を装甲板の手前で作動させる)に変更されている。
なお、磁気吸着地雷対策のツィンメリット・コーティングは基本的にH型以降のIV号戦車に施されたが、大戦末期に廃止されておりJ型後期からは施されていない。

戦力強化と簡易化によって大量生産されたIV号戦車は「軍馬」の愛称で戦車兵たちから信頼され、ドイツ最後の日まで主力戦車として第一線で戦った。
ただ第2次世界大戦の後半には、その性能はすでに限界にきていた。
IV号戦車の車体は手頃な使い易いサイズ、性能であったため突撃砲、駆逐戦車、対空戦車などの様々な特殊車両のベースとしても多く流用されている。


●部隊配備

連合軍がノルマンディー上陸作戦(Operation Neptune:ネプチューン作戦)を開始した1944年6月6日時点でのドイツ陸軍機甲師団の編制は、当初防衛に当たった第21、第12SS、教導機甲師団のうち第21機甲師団はIV号戦車が主力で、第12SS、教導機甲師団はIV号戦車とパンター戦車を配備された理想的な編制であった。
その後増派された第9、第116機甲師団もパンター戦車とIV号戦車を装備していたが、これはこれらの部隊がフランスで休養再編制中であったことが大きいだろう。

1944年12月16日の「ラインの守り作戦」開始時点における西部戦線の保有戦車は、IV号戦車が503両に対してパンター戦車が471両となっていた。
一方、東部戦線については若干時期が異なるが、1944年5月の段階でIV号戦車603両に対してパンター戦車313両という数字が残されている。

その後、パンター戦車の数が増えたことでこの数字は逆転される。
しかしそれでもIV号戦車が最後まで、ドイツ陸軍の主力戦車であったことは間違いない。
大戦終盤の1945年2月1日時点でのIV号戦車の登録数は、1,571両であった。


<IV号戦車J型>

全長:    7.02m
車体長:   5.89m
全幅:    2.88m
全高:    2.68m
全備重量: 25.0t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL120TRM112 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 272hp/2,800rpm
最大速度: 38km/h
航続距離: 320km
武装:    48口径7.5cm戦車砲KwK40×1 (87発)
        7.92mm機関銃MG34×2 (3,150発)
装甲厚:   10〜80mm


兵器諸元


<参考文献>

・「パンツァー2006年12月号 ドイツ陸軍のワークホース IV号戦車の構造とバリエーション(2)」 久米幸雄 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2011年12月号 AFV比較論 IV号戦車H/J型 vs 巡航戦車コメット」 久米幸雄 著  アルゴノート
 社
・「パンツァー1999年4月号 M4シャーマン76mm砲装備型 vs IV号戦車H/J型」 斎木伸生 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2015年12月号 ドイツIV号戦車(4) H/J型」 寺田光男 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2019年10月号 フィンランド戦車発達史」 斎木伸生 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」  ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年6月号 IV号戦車の構造特徴と装備」 佐藤光一 著  デルタ出版
・「グランドパワー1999年7月号 IV号戦車J型のディテール」 佐藤光一 著  デルタ出版
・「グランドパワー1999年6月号 IV号戦車 6年間の戦歴(2)」 後藤仁 著  デルタ出版
・「グランドパワー1999年5月号 IV号戦車の開発と各型」 佐藤光一 著  デルタ出版
・「グランドパワー2002年12月号 IV号戦車H/J型」 箙浩一 著  デルタ出版
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


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