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III号戦車N型





●III号戦車N型

1942年3月からIV号戦車が従来装備していたエッセンのクルップ社製の24口径7.5cm戦車砲KwK37に代えて、より長砲身で威力の高いデュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の43口径7.5cm戦車砲KwK40を装備するようになったことを踏まえ、アルベルト・シュペーア軍需大臣は同年6月の会議で7.5cm戦車砲KwK37の生産を中止することを提案し、アドルフ・ヒトラー総統もこれに同意した。
一方で、在庫として残った450門のKwK37の処置が考えられた。

ここで、主力戦車としてはすでに限界に達していたIII号戦車を改修してこの砲を搭載すれば、火力支援戦車として使えるのではないかというアイデアが生まれた。
こうして1942年6〜8月にかけてIII号戦車J型3両、L型447両を流用して、従来装備していた5cm戦車砲に代えて7.5cm戦車砲KwK37が搭載された。
これがIII号戦車N型で、III号戦車の最終生産型である。

1942年11月にIII号戦車N型の部隊試験の結果が報告されたが非常に好評であり、それを受けてM型車体も使って7.5cm戦車砲搭載型のIII号戦車を生産することとされた。
こうして1943年8月までにM型をベースとして、III号戦車N型がさらに213両生産された。
さらに1944年にかけて前線から引き上げられたIII号戦車も改修され、37両がN型仕様に変更されている。

III号戦車N型は主砲を7.5cm戦車砲KwK37に換装した以外はとくに共通の改良点は無く、ベースとなったIII号戦車の型式や生産時期によって車両の仕様が異なっていた。
ただし一般的に、L型から導入された主砲防盾の空間装甲式の増加装甲は未装備だったようである。
また後期の一部の車両は最大装甲厚が100mmに強化され、ハッチが1枚開きとなった新型の車長用キューポラを装備していたようである。

III号戦車N型の主砲である24口径7.5cm戦車砲KwK37は従来の5cm戦車砲に比べて榴弾の威力が大きく、また射距離に関わらず100mmの装甲穿孔力を持つ成形炸薬弾(Gr.38対戦車榴弾)も使用することができたため、N型は火力支援能力だけでなく対戦車戦闘能力でも従来のIII号戦車を上回っていた。
なおN型の7.5cm砲弾の搭載数はベースとなったIII号戦車の型式によって異なり、L型ベースの車両で56発、M型ベースの車両で64発となっていた。


●部隊配備

1942〜43年にかけての時期、III号戦車は性能的に完全に峠を越え連合軍の新型戦車に対して歯が立たなくなってきたが、数量的にはまだドイツ軍機甲部隊の主力であった。
しかし、ロシア南西部のクールスク市周辺突出部の奪回を目指した1943年7月の「城塞作戦」(Unternehmen Zitadelle)の頃には、ドイツ軍の主力戦車の座はIV号戦車に完全に移行しており、III号戦車は支援戦車の役割を担うようになる。

1942年末から登場したIII号戦車N型はその象徴で、IV号戦車の御下がりの24口径7.5cm戦車砲KwK37を装備し火力支援任務に活躍した。
このN型は新編されたばかりでまだ車両が充足していなかったティーガー重戦車大隊にも、不足する戦車戦力を補うために多数が配属されている。

そして戦力価値が無くなったIII号戦車の生産は1943年8月に終了し、その後は戦車の不足を補う対戦車兵器として重要性が増したIII号突撃砲向けに下部車体のみ生産が続けられた。
非力なIII号戦車と違い、強力な長砲身7.5cm加農砲を装備するIII号突撃砲は防御戦闘が主体となった大戦後半の戦いで活躍し、ドイツ軍首脳部も戦車より有効な戦闘車両であると称賛している。

一方、生き残ったIII号戦車も常に不足する戦車戦力を補うため東部戦線、イタリア、ノルマンディーと使用が続けられたが、もはや性能的に限界であり損耗を重ねるだけであった。
しかし非力で弱体な老骨に鞭打ちながら、その戦いは1945年5月のドイツ降伏まで続いたのである。
大戦末期の1945年2月1日時点のIII号戦車の登録数は、534両であった。


<III号戦車N型>

全長:    5.52m(L型ベース)/5.65m(M型ベース)
全幅:    2.95m
全高:    2.50m
全備重量: 23.0t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 300hp/3,000rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 155km
武装:    24口径7.5cm戦車砲KwK37×1 (56発(L型ベース))/(64発(M型ベース))
        7.92mm機関銃MG34×2 (2,700発)
装甲厚:   10〜57mm


兵器諸元


<参考文献>

・「パンツァー2016年10月号 近代戦車の先駆となったIII号戦車の先進性」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「ピクトリアル III号戦車シリーズ」  アルゴノート社
・「グランドパワー2001年5月号 ドイツIII号戦車(1) III号戦車の開発と構造」 嶋田魁 著  デルタ出版
・「グランドパワー2001年6月号 ドイツIII号戦車(2) III号戦車の変遷」 嶋田魁 著  デルタ出版
・「グランドパワー2012年8月号 ドイツ戦車の装甲と武装」 国本康文 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2019年7月号 ドイツIII号戦車(4)」 寺田光男 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年1月号 III号戦車の武装」 国本康文 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年3月号 ドイツIII号戦車(2)」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」  ガリレオ出版
・「世界の戦車イラストレイテッド21 III号中戦車 1936〜1944」 ブライアン・ペレット 著  大日本絵画
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著  大日本絵画
・「アハトゥンク・パンツァー第2集 III号戦車編」  大日本絵画
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


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