III号戦車B型 |
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●III号戦車B型 III号戦車B型(2/ZW)はA型に続く2番目の生産型であり、1937年中に15両が生産された。 車体製造番号は60206〜60220であったが、この他に当時開発が開始されたIII号突撃砲の試作実験用として別枠でシャシーのみ5両分(車体製造番号60201〜60205)が製造されており、これを含めた車体製造番号60201〜60220がIII号戦車B型として分類される。 なおIII号突撃砲用に供出された5両分のシャシーは、1938年初めまでに4両に木製のオープントップ式戦闘室と木製のダミー砲、1両に軟鋼製のオープントップ式戦闘室と24口径7.5cm砲が搭載されてIII号突撃砲の試作車となり、さらに1939年半ばまでに5両とも軟鋼製の密閉式戦闘室と24口径7.5cm砲が搭載された。 この試作車5両は戦闘室が軟鋼製であるために実戦には投入されず、ユーターボークの突撃砲兵学校で1941年末まで乗員の教育訓練用として使用された。 III号戦車B型の最大の改良点は、A型で問題のあった走行装置を完全に設計し直したことである。 A型ではアメリカのクリスティー戦車の影響を受けた、コイル・スプリング(螺旋ばね)による独立懸架式サスペンションが採用されていたが、B型ではこれに替えてイギリスのヴィッカーズ6t戦車のものに似た、リーフ・スプリング(板ばね)とボギーを用いたオーソドックスな方式のサスペンションが用いられた。 転輪は小直径のものが片側8個となり、2個ずつボギーで連結したものをリーフ・スプリングの左右に取り付けてサスペンションユニットを構成し、そのユニットを車体の左右側面に各2個ずつ取り付けていた。 転輪の直径が小さくなったとはいえ数が片側3個増えたため、車体を延長して起動輪と誘導輪の間隔が広げられており、上部支持輪も片側3個に増やされている。 このサスペンション方式は足周りを支えるリーフ・スプリングが剥き出しであり防御上問題があったものの、実用性は高くコストも掛からなかったため同時期に開発された他国の戦車にも広く採用されていた。 このため、ドイツもIII号戦車の試作段階で影響を受けたものと思われる。 またIII号戦車B型は、車体後部の機関室周辺のデザインもA型からかなり変化していた。 A型では機関室上面に2個設けられていたルーヴァー付きの点検用ハッチは、観音開き式のハッチとして中央部にまとめられ、その両側に細長いルーヴァーが新たに設けられた。 A型で機関室の左右側面に設けられていた吸気用グリルは上面に移され、A型では大型のものが2個設けられていた機関室上面後部の排気用グリルもB型では小さく6分割されたものに変更され、車体後面の排気用マフラーもより大型のものに変更された。 その他車体前面の点検用ハッチが角形から円形になる、砲塔上面後部の車長用キューポラの背が高くなり、砲塔後部のガンポートの形状も角形から円形になるなど、細かい手直しも行われている。 III号戦車B型は足周りの改良のおかげか、戦闘重量が15.9tとA型よりわずかに増えたにも関わらず、路上最大速度はA型の32km/hから35km/hへと逆に向上している。 しかしやはり満足いく性能ではなかったようで、すぐに生産は次のC型に移行している。 |
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<III号戦車B型> 全長: 6.00m 全幅: 2.81m 全高: 2.45m 全備重量: 15.9t 乗員: 5名 エンジン: マイバッハHL108TR 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン 最大出力: 250hp/3,000rpm 最大速度: 35km/h 航続距離: 165km 武装: 46.5口径3.7cm戦車砲KwK36×1 (120発) 7.92mm機関銃MG34×3 (4,425発) 装甲厚: 5〜14.5mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2016年10月号 近代戦車の先駆となったIII号戦車の先進性」 久米幸雄 著 アルゴノート社 ・「ピクトリアル III号戦車シリーズ」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2001年5月号 ドイツIII号戦車(1) III号戦車の開発と構造」 嶋田魁 著 デルタ出版 ・「グランドパワー2001年6月号 ドイツIII号戦車(2) III号戦車の変遷」 嶋田魁 著 デルタ出版 ・「グランドパワー2019年1月号 ドイツIII号戦車(1)」 寺田光男 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2010年1月号 ドイツIII号戦車(1)」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2006年1月号 III号突撃砲(1)」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版 ・「世界の戦車イラストレイテッド21 III号中戦車 1936〜1944」 ブライアン・ペレット 著 大日本絵画 ・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画 ・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画 ・「アハトゥンク・パンツァー第2集 III号戦車編」 大日本絵画 ・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー |
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