第2次世界大戦以前、ハンガリー陸軍における戦車勢力はイタリアより導入した143両のフィアット・アンサルド社製のCV33快速戦車と、スウェーデンのランツヴェルク社製のL-60B軽戦車を国産化した7t軽戦車が少数配備されていただけであった。
7t軽戦車は、ブダペストのヴァイス・マンフレード社がL-60B軽戦車のライセンス生産権を取得して国産化したもので、1938年9月から「38Mトルディ」の呼称でMÁVAG、ガンズ両社が生産を開始した。

ちなみに制式呼称の「38M」（38 Mod）は「1938年制式」を表し、愛称の「トルディ」（Toldi）は14世紀に活躍したハンガリーの国民的英雄の名前を採っている。
トルディ軽戦車は基本的にはL-60B軽戦車と同仕様であったが、武装はスイスのゾーロトゥルン社からライセンス生産権を得た46口径20mm対戦車銃36Mと、国産の8mm機関銃34/37Aに変更されていた。

トルディ軽戦車の生産は1940年4月～1941年5月にかけて行われトルディＩ軽戦車が80両、トルディＩＩ軽戦車が110両完成している。
トルディＩＩ軽戦車は全コンポーネントを国産としたもので、トルディＩ軽戦車がドイツのビューシンクNAG社製のL8V/36TR V型8気筒液冷ガソリン・エンジンを搭載していたのに対し、トルディＩＩ軽戦車はL8V/36TRエンジンをガンズ社でライセンス生産したVGT107 V型8気筒液冷ガソリン・エンジンに換装していた。

またトルディＩＩ軽戦車は、変速・操向機と転輪も国産のものが用いられていた。
トルディは軽戦車といっても車体がかなり大柄だったため、20mm対戦車銃36Mは本車の主武装としてはやや威力が物足りなかった。
このため1942～43年にかけてトルディＩとトルディＩＩ各40両ずつに対して、MÁVAG社が開発した40mm戦車砲42Mの砲身を縮めたものへの換装が実施された。

この改造車はトルディＩＩaと改称されたが、同時期にトルディ軽戦車の発展型として装甲の強化と、トルディＩＩaと同じ40mm戦車砲を搭載する42MトルディIII軽戦車の生産がガンズ社に対して命じられた。
しかし、より強力な中戦車であるトゥラーンの生産が行われていたこともあって、トルディIII軽戦車は1944年までに12両が完成しただけに終わっている。