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II号戦車F型





●II号戦車F型

II号戦車F型は、A/B/C型の後継として位置付けられる車両である。
本来ならば生産を終了しているはずのII号戦車であったが、機甲師団が増加されたにも関わらず主力となるはずのIII号/IV号戦車の生産数が思うように増えなかったため、性能的にはもはや充分とはいえないが価格や生産時間でメリットのあるII号戦車の再生産が決定した。

このためII号戦車F型は基本的な構造はA/B/C型と同様であったが、実戦で得られた戦訓を基に各部に改良が施されていた。
従来は曲面に加工されていた車体前面の装甲板は25mm厚の平面板に変更され、戦闘室前面の装甲板は30mm厚に強化されると共に生産性を考慮して単純な一枚板に改められた。

また戦闘室前面には操縦手を狙ってくる敵の狙撃兵への対処として、操縦手用ヴァイザーの隣に外見をヴァイザーに似せたカバーが装着されるようになった。
砲塔も前面装甲厚が30mmに強化され、生産当初から上面に車長用キューポラを装着して完成した。
一部の車両では砲塔後部に雑具箱を装着していたがこれは標準装備ではなく、未装備のままとされた車両も多い。

また機関室上面左側の無線手用ハッチと、その後方に設けられていたグリルの形状がシンプルなものに改められた。
II号戦車F型の生産は1941年3月より開始されたが、生産はポーランド・ヴロツワフのFAMO社(Fahrzeug und Motoren Werke:車両・発動機製作所)のみが担当し、1942年12月までに524両が完成した。

生産中の1942年6月、デュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の46口径7.5cm対戦車砲PaK40を装備するマルダーII対戦車自走砲にII号戦車F型の車台を転用することが決まり、生産数の50%をこれに回すこととされ、さらには同年8月から全てマルダーII用として生産することが決まった。
このため本来ならばこの時点でII号戦車の生産は終了するのだが、FAMO社が余った部品などを用いて1942年12月までに15両を生産した。


●部隊配備

独ソ戦が勃発した1941年においても、II号戦車はまだまだ第一線で使用されていた。
ソ連侵攻(バルバロッサ作戦)が開始された1941年6月の時点で各戦車大隊は20〜25両のII号戦車を装備しており、また戦車連隊の連隊本部小隊もII号戦車を装備していた。
さらに何両かのII号戦車が司令部の高級将校用に使用されたが、これらの一部は指揮車両として使用するため無線機が増設されていた。

戦車大隊のII号戦車は通常残敵の掃討や、III号/IV号戦車が突破戦闘を行う時の側面援護などを受け持ち、連隊本部に配属されたII号戦車は強行偵察と本部の護衛を任務としていた。
当時2cm機関砲用の新型徹甲弾(Pz.Gr.40)がかなり使用され始めたため、II号戦車の火力はかなり向上していた。

この結果II号戦車はソ連軍の軽戦車となら対等に渡り合うことが可能になったが、もちろんT-34中戦車やKV-1重戦車などの強力な戦車には歯が立たなかった。
II号戦車の能力としては、これが限界だったのである。
1941年には、II号戦車は北アフリカ戦線にも送られている。

同年3月に北アフリカに到着した第5戦車連隊はその時点でA〜C各型合わせて45両のII号戦車を保有しており、第15機甲師団も同数を保有していた。
1942年になるとII号戦車F型も砂漠の戦いに姿を見せ始め、同年11月にチュニジアに派遣された第10機甲師団にもF型が配備されていた。

これら北アフリカで使用されたII号戦車は換気装置に若干の改良が加えられ、さらに砂塵対策のシーリングが行われており「Tp」(Tropisch:熱帯)型と呼ばれていた。
1939〜40年の電撃戦では主役を務めたII号戦車だったが、独ソ戦が開始された1941年の戦闘では実に大きな損害を出していた。

6〜9月の期間で全戦線を合計したII号戦車の損失は393両に上り、さらに1942年の前半だけでも159両が失われている。
II号戦車のような軽戦車はもはや、火力と防御力が大幅に向上した連合軍の新型戦車に対して歯が立たないことが明らかになったのである。

II号戦車の武装強化計画は1941年夏頃から具体化されつつあったが、戦闘の現実はこのプランを放棄させるのに充分であった。
こうして、II号戦車の生産は1942年中に打ち切られた。
しかし生き残ったII号戦車は戦車部隊の定数からは外されたものの、員数外の兵力としてドイツ軍の最終的敗北まで長く苦しい戦いを続けたのである。


<II号戦車F型>

全長:    4.81m
全幅:    2.22m
全高:    2.15m
全備重量: 9.5t
乗員:    3名
エンジン:  マイバッハHL62TRM 直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 140hp/2,600rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 200km
武装:    55口径2cm機関砲KwK30×1 (180発)
        7.92mm機関銃MG34×1 (2,250発)
装甲厚:   5〜35mm


<参考文献>

・「グランドパワー2005年12月号 Pz.Kpfw.II IN ACTION」 後藤仁/嶋田魁 共著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2012年8月号 ドイツ戦車の装甲と武装」 国本康文 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2011年6月号 ドイツII号戦車シリーズ」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年11月号 ドイツII号軽戦車」 大村晴 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」  ガリレオ出版
・「パンツァー2009年11月号 II号戦車の開発とバリエーション」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年10月号 ドイツAFVアルバム(379)」 箙公一 著  アルゴノート社
・「ピクトリアル ドイツ軽戦車」  アルゴノート社
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著  大日本絵画
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「図解・ドイツ装甲師団」 高貫布士 著  並木書房
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


兵器諸元

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