ＩＩ号戦車D/E型は軽機械化師団の戦車大隊で使用する目的で、より高性能な高速戦車を目指して製作されたもので、ベルリン・マリーエンフェルデのダイムラー・ベンツ社の手で1938年から開発が始められた。
D/E型は砲塔こそ他のＩＩ号戦車系列と同じものを使用していたものの、車体と上部構造物は完全に別設計となっていた。

車内レイアウトはＩＩ号戦車A～C型と同じだったが車体前部に操縦手と無線手が並んで座り、双方にスライド式の視察口と視察クラッペが装備されていた。
武装はA～C型と同じで、デュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の55口径2cm機関砲KwK30と、オベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34を各1門ずつ、砲塔防盾に同軸装備していた。
車体の装甲厚は前面30mm、側/後面14.5mmで、戦闘重量は10tであった。

D/E型の最大の特徴は足周りで機動力を向上させるため、トーションバー（捩り棒）式サスペンションと片側4個の大直径転輪の組み合わせに変更されており、上部支持輪は廃止された。
併せて履帯も、センターガイドを持つシングルピン型が用いられた。
各部のレイアウトや基本設計などは同じくダイムラー・ベンツ社が開発したIII号戦車を参考にしており、確かに全体的なイメージはよく似ている。

エンジンはフリードリヒスハーフェンのマイバッハ発動機製作所製のHL62TRM 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン（出力140hp）、変速機も同社製のVG102128変速機（前進7段/後進3段）が使用され、操向操作は機械式クラッチとブレーキによって行われた。
最大速度は路上で55km/hを発揮でき、従来のＩＩ号戦車より高速であった。

ＩＩ号戦車D型とE型は基本構造はほとんど同じであったが、E型ではサスペンションが強化され、ハーフトラックのものによく似たゴムパッド付きのローラー・ベアリングを組み込んだシングルピン型履帯が装着された。
またこれに伴って、起動輪と誘導輪も変更されている。
優れた高速戦車という謳い文句で開発されたＩＩ号戦車D/E型だったが、完成した実車の性能は予想を下回った。

最大速度こそ従来のＩＩ号戦車を上回ってはいたものの、特に不整地走行能力が良くなかった。
このためわずかに43両のD/E型が、1938年5月～1939年8月にかけてニュルンベルクのMAN社（Maschinenfabrik Augsburg-Nürnberg：アウクスブルク・ニュルンベルク機械製作所）で生産されたに留まった。
ＩＩ号戦車D/E型は当初の目的だった軽機械化師団に配備するにはその性能が期待できなかったため、それらの師団にはＩ号戦車および通常のＩＩ号戦車が配備されている。

そして生産されたＩＩ号戦車D/E型は第10機甲師団の第8戦車連隊に装備されて、1939年9月のポーランド侵攻作戦（Unternehmen Weiß：白作戦）に参加したが評判は芳しくなかった。
このため、1940年5月のフランス侵攻直前には部隊から引き上げられてしまった。
残った車両はＩＩ号火焔放射戦車、さらにマルダーＩＩ対戦車自走砲に転用されている。