HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装軌/半装軌式装甲車装軌/半装軌式装甲車(中国)>03式空挺戦闘車


03式空挺戦闘車





●開発

中国は軍の近代化の一環として緊急展開能力の向上を目指しており、空挺部隊に配備するAFVの開発も課題としていた。
空挺用のAFVの分野ではロシアが他国をリードしていたため、中国はロシアからBMD空挺戦闘車シリーズを導入することを計画し、1995年から2国間で交渉を開始した。

特に中国側はBMDシリーズの最新型であるBMD-3空挺戦闘車の購入を強く要望したが、高価で自軍での配備も進んでいない新鋭AFVを他国に売却することにロシア側は難色を示した。
ロシア側は代わりにより旧式なBMD-1およびBMD-2空挺戦闘車を売却することを中国側に提案したが、これらの車両についても相当高額な売却価格を提示されたらしく、結局交渉は決裂することとなった。

このため中国は空挺用のAFVを独自に開発しなければならなくなり、5年の歳月をかけて03式空挺戦闘車を開発したのである。
本車は「WZ-506」の開発名称でNORINCO(中国北方工業公司)の手で開発が進められたが、開発に際してはロシアのBMDシリーズに関する資料が徹底的に研究されたようで、車体デザインやアルミ装甲の導入、折り畳み可能な油気圧式サスペンションの採用などBMDシリーズの影響を強く受けている。

本車の制式名称は当初「ZLC-2000」と伝えられていたが、後に制式名称が「03式空降兵戦車」(ZBD-03)であることが判明した。
03式空挺戦闘車は2005年には中国空軍空挺部隊への配備が開始された模様で、同年8〜9月に実施されたロシア軍との合同軍事演習「和平使命2005」において初めてその存在が確認された。

中国空軍は現在3個空挺師団を保有しており、03式空挺戦闘車はこれらの部隊の主力AFVとして現在生産が続けられている模様である。
なお、03式空挺戦闘車には現在確認されているだけで装甲指揮車、国産の「紅箭8」対戦車ミサイルを搭載する戦車駆逐車、装甲回収車の3種類の派生型が存在し、部隊内でファミリーを構成している。


●構造

03式空挺戦闘車の車体は、軽量化のために防弾アルミ板の全溶接構造となっている。
中国軍のAFVはほとんどが素材に防弾鋼板を使用しているので、本車のアルミ装甲は異色といえる。
アルミ装甲を使用したおかげで、本車は戦闘重量を8〜12t程度と低く抑えることに成功している。
ただし装甲防御力は低く、車体前面が12.7mm重機関銃弾に耐えられる程度、その他の部分は7.62mm機関銃弾に耐えられる程度といわれている。

車内レイアウトは車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体後部が4〜5名の歩兵を収容する兵員室となっている。
03式空挺戦闘車がロシアのBMDシリーズと大きく異なる点は、BMDシリーズが車体最後部に機関室を配置しているため兵員の乗降がスムーズに行えない欠点があるのに対して、本車は機関室を前方に配しているため、兵員を車体後面に設けられた右開き式の大型ドアからスムーズに乗降させることができる点である。

03式空挺戦闘車の砲塔はNORINCOが開発した「GCTWM」と呼ばれる1名用のもので、86式歩兵戦闘車の改良型である86A式歩兵戦闘車にも採用されているものである。
砲塔重量は1,500kgで、武装は砲塔前面に旧ソ連製の80.5口径30mm機関砲2A72を国産化したものと、86式7.62mm機関銃(旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTの国産型)を同軸に装備している他、砲塔上面右側に国産の「紅箭73C」対戦車ミサイルの発射レールを装備している。

30mm機関砲2A72は徹甲弾を使用した場合砲口初速1,000m/秒、発射速度300発/分で、最大射程は地上目標で4,000m、空中目標で2,500mとなっている。
給弾機構は2種併用式で、徹甲弾125発と榴弾225発の合計350発の弾薬を搭載している。
機関砲の俯仰角は−6〜+60度で、高仰角が取れるためにヘリやビル内の目標とも交戦できる。

「紅箭73C」対戦車ミサイルは、旧ソ連製の9M14「マリュートカ」(赤ん坊)対戦車ミサイルの誘導方式を手動式指令照準線方式から半自動式指令照準線方式に改めた改良型で、ERA(爆発反応装甲)対策として弾頭先端部にプローブを装着している。
砲塔上面左側には昼/夜間照準機が装備されているが、安定化はされていない。

砲塔上面右側に設けられた砲手用サイトには、赤外線暗視装置が内蔵されている。
03式空挺戦闘車の足周りは片側5個の転輪と片側3個の上部支持輪で構成されており、BMDシリーズとは異なり起動輪を前方に配置するフロントドライブ方式を採用している。
サスペンションは、車高を自由に調節することができる油気圧式サスペンションを採用している。

エンジンは型式不明だが出力320hpのディーゼル・エンジンを搭載しており、本車は戦闘重量が軽いこともあって路上最大速度68km/h、路上航続距離500kmの高い機動性能を発揮する。
03式空挺戦闘車はBMDシリーズと同様に浮航性を備えているが、BMDシリーズが車体後部にウォーター・ジェットを備えているのに対して本車は履帯の駆動により水上での推進力を得ており、水上航行速度はBMDシリーズに及ばない(BMDシリーズの10km/hに対して本車は6km/h)。

また03式空挺戦闘車はBMDシリーズと同様にIl-76大型輸送機などを使用して、空輸もパラシュート降下も可能である。
空輸の場合、Il-76輸送機なら本車を同時に3両輸送することができる。
パラシュート降下の場合は、着地時の衝撃によるサスペンションの破損を防ぐために油気圧式サスペンションのアームを畳むことによって車底と転輪接地部を水平にし、専用パレットに載せて投下される。

専用パレットにはパラシュートの他、地上直前で減速のため点火されるロケット・ブースターが取り付けられていて、着地時の衝撃を減少するようになっている。
なおこの際、乗員は別にパラシュートで空挺降下するようになっている。
このパラシュート降下システムはBMD-1/2空挺戦闘車と同様のもので(BMD-3空挺戦闘車は乗車したままパラシュート降下できる)、ロシアからの技術援助を受けたのではないかと推測されている。


<03式空挺戦闘車>

全長:    5.60m
全幅:    2.60m
全高:    2.20m
全備重量: 8.0〜12.0t
乗員:    3名
兵員:    4〜5名
エンジン:  ディーゼル
最大出力: 320hp
最大速度: 68km/h(浮航 6km/h)
航続距離: 500km
武装:    80.5口径30mm機関砲2A72×1 (350発)
        86式7.62mm機関銃×1 (1,000発)
        「紅箭73C」対戦車ミサイル発射機×1 (4発)
装甲厚:  


<参考文献>

・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」  アルゴノート社
・「パンツァー2017年3月号 珠海航空展2016 出品された中国製AFVを見る」  アルゴノート社
・「パンツァー2010年1月号 中国建国60周年軍事パレード」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「戦闘車輌大百科」  アルゴノート社
・「世界の戦車パーフェクトBOOK」  コスミック出版


HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装軌/半装軌式装甲車装軌/半装軌式装甲車(中国)>03式空挺戦闘車